子どもの成長に影響するのは「愛情」よりも「安心感」だった

世代間連鎖を防ぐ子育て論〈15〉
信田 さよ子 プロフィール

子どもが泣いたとき、自分に課すべきこと

アタッチメントや感覚否定について述べてきましたが、現在、育児の真っ最中のひとは、とにかく実行しなければならないことがあります。

それは、子どもが泣いたら、とにかく「よしよし」と口に出すことです。「よしよし」というのはあやす言葉ですが、「良し」という肯定を表してもいます。

とにかく「よしよし」とつぶやくことを自分に課すのです。それが条件反射になるくらい、毎日練習してみましょう。

「自分はそんなふうに言ってもらったことがない」と気づくひともいるでしょう。それはとても重要な気づきだといえます。そして、「私は未経験のことをやろうとしている、なんてすごいんだろう」と、「よしよし」に取り組む自分をほめてあげましょう。

 

一人でぶつぶつ、「よしよし」と言う練習をする、このような練習をして、それを習慣化していく方法を「行動療法」と言います。理由はなんであれ、とにかく行動する、それを習慣化させることが大切なのです。

もう少し子どもの年齢が上がれば、「いやだ」「お腹が空いた」と言うこともあるでしょう。転べば「痛い!」と言うでしょう。そんなとき、「いやじゃないの」「お腹なんか空いてないの」「痛くない!」と言ってはなりません。それこそ感覚否定だからです。

「痛い」と子どもが言えば「痛いのね」と復唱する。共感できなくても腹がたっても、とにかく子どもの言葉を「復唱」するのです。

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感情がこもっていなくても、どこか機械的であったとしても、否定するよりはるかにましだからです。

「痛いの痛いの飛んでけ~」と言うことは、「痛くないでしょ」が感覚否定であるのに対して、感覚肯定になります。このような伝承された言葉遣いには、感覚否定をしない知恵が詰まっているのかもしれません。

「世代間連鎖を防ぎたい」と願うことが第一歩になる

育児において感覚否定に陥らないためには、子どもの言動に対して自分がどう感じているかを察知する必要があります。

「ああ、自分は怯えている」「子どもが泣くとパニックになる」「子どもが泣くと心臓の鼓動が早くなる」といった具合に。そのことは日々の育児の場面ですぐに自覚できるわけではありません。

自覚するためには、子どものようすと同時に、自分の感覚を観察する必要があります。それをセルフウォッチング(自己観察)と呼びますが、ふっと立ち止まって「今自分はどう感じているのか」と観察してみるのです。

それによって、自分が子どもと向き合うときに不意に生じる負の反応を自覚することができます。

なぜ子どもが泣くと、自分が責められたように感じるのか、なぜ子どもがぐずったりダダをこねたりすると、見境もなく怒りが湧いてきて怒鳴りたくなるのか。

このような反応が子どもにとって感覚否定になることを知る必要があります。そしてその多くが、自分が育つ中で経験してきたものだとすれば、自分はそれを繰り返さないようにしなければなりません。

自分が親からどのようなことを継承したか、何を子どもに継承させたくないかを知るために、もう一つ大切なのは生育歴を振り返ることです。

ときに振り返ることは苦しかったり、蓋をしておきたいという気持ちから思い出せなかったり、思い出すことで不安定になったりすることも起きます。

できれば専門家(カウンセラー)や、おなじ経験をした仲間(友人)などといっしょに振り返るほうが安全かもしれません。

これは私の持論なのですが、妊娠した女性とその夫を対象とした両親学級において、沐浴や授乳を教わるのに加え、そのうちの1回を生育歴作成に当てたらどうかと思っています。

夫婦それぞれが生育歴を振り返ることで、改めて、生まれてくる子どもに伝えていきたいこと、継承させたくないことを自覚できるのではないでしょうか。

どの人にも、「自分が親にされたように自分の子どもにはしたくない」という点がひとつはあるはずです。それを確認するために生育歴を振り返ることは、狭義の世代間連鎖の防止ともいえるでしょう。

今回はいくつかの具体的な提言をしましたが、日々の練習を積み重ねることで、子どもに対して望ましい育児を実践することができると思っています。自分はそうしてもらってこなかったとしても、です。

何より「世代間連鎖を防ぎたい」と願うことそのものが、すでに防止の第一歩なのです。そんな自分のことを「すばらしい」と、自信を持っていただきたいと思います。