東大から「内定取り消し」を受けた大学教授がどうしても伝えたいこと

約2年裁判をした結果とその教訓
宮川 剛 プロフィール

労働条件通知書とその後の交渉も

発行すべきは、内定通知書だけではありません。

業務内容、報酬、その他、各種の労働条件が記載された労働条件通知書も発行されるべきでしょう。

国際的にも、給与、福利厚生、仕事内容、上司などの概要が書かれたオーファーレターかそれに相当するものが発行されるのが普通です。

さらに、そのオーファーレターをもとに、大学と採用候補者の間で条件の交渉が行われ、その結果、最終的に労働条件が確定します。

しかし、日本の大学のほとんどにおいては、労働条件通知書に該当するものは発行されず、給与の詳細や業務内容の詳細は、着任するまで、あるいは着任からしばらくしないとわからない、という状況です。

つまり、報酬の額、業務内容などについて、外国の大学のような条件の交渉の余地はほぼなく、雇用側の大学が決めたものを上から一方的に被雇用者に押し付ける形式です。

米国、最近では中国もそうでしょうが、研究者は、プロのスポーツ選手のようなもので、その実力によって研究者マーケットでの価値が決まる、というのが先進国での大学と研究者の関係のあり方です。

給与などの労働条件に交渉の余地がほぼなく、大学が圧倒的に優位な立場で契約を進めるのは、「契約」という概念にそもそもなじまない方式だと思われます。

 

今回、私の件では、当初から「兼任」を前提として公募に応募し、採用時の面接でも「兼任」は認められていました。

内定後の交渉の中で、「兼任」の形態の一つとしてクロスアポイントメントを提案しただけだったのですが、アメリカ風にそのような交渉をしたことが原因で内定が白紙撤回されてしまったわけです。

白紙撤回の連絡の直後に、クロスアポイントメントである必要はないので雇用をお願いします、と提案を撤回したのにもかかわらず、白紙撤回は撤回されませんでした。

日本の大学でも、内定通知書とともに、「大学が労働条件通知書を発行すること」「労働条件通知書の発行後からの条件交渉を普通に認めること」が必要です。

大学と研究者が対等な立場で交渉できないようでは、日本の大学が国際化することは決してできないでしょう。

大学によっては、外国人に対してだけそのようなものを発行し、交渉を行っているところもあるようです。しかし、外国人には行い、日本人には行わないというのはおかしいと言わざるを得ません。

日本の大学も国際標準に合わせ、日本人への対応も同等にすべきです。

これも大学に限ったことではありません。雇用者と被雇用者の間の労働条件の交渉は一般企業でも普通に行われるようになるべきです。

条件交渉をしたからといって、内定が取り消されるようなことがあってはなりません。

被雇用者が圧倒的に不利な労働環境では、国際社会の中のシビアな人材獲得競争の中で、日本の企業が生き残ることはできないでしょう。