〔PHOTO〕gettyimages

東大から「内定取り消し」を受けた大学教授がどうしても伝えたいこと

約2年裁判をした結果とその教訓

内定通知(!?)とその取り消し

それは、2017年1月のことでした。

私は、東京大学教養学部統合自然科学科・学科長、大学院総合文化研究科・広域科学専攻生命環境科学系・教授及び同研究科人事委員会・委員長を務められている先生より、お電話で、私の教授としての採用が決定したことと、着任が6月初旬となる見込みであることを告げ、「来て下さいますね?」というお言葉をいただきました。

私は、「はい、もちろん、喜んで。今後、お世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします」と即答しました。

その後、その人事委員長の先生から、「今回の当学科の人事にご応募いただき、ありがとうございました。すでにご連絡いたしましたように、先生に来ていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします」と記載されたメールをいただきました。

上記の連絡を受け、私は人事委員長に東大・駒場キャンパスに招待いただき、着任後に使用することになる研究室を見学させていただき、研究室の引っ越しのために研究室の採寸作業を行いました。

その際に、周りの研究室の教授やスタッフの方々に、しばらく前にご退官されていた教授の方の後任者として紹介いただきました。

また、この訪問において、私は、人事委員長から、私が担当することになる授業が記載された時間割及び実験実習で使用するテキストをいただき、また、生命科学の教科書をお示しいただき、私が冬学期に担当することになる章について具体的な説明を受け、実習や講義の準備を始めることを示唆いただきました。

さらに、私の研究のために必要となるマウスの飼育スペースの配置を検討するために、大学の建物の配置図もいただき、ご担当の別の教授の先生から、マウスの飼育用の候補スペースとして現状で使用可能な空きスペースに加え、工事を施すことでより多くのマウスが飼育可能になる空きスペース2箇所をご案内いただきました。

その後も、人事委員長より、「冬学期ご担当していただく生命科学の教科書を入手しましたので、お送りさせていただきます。」とメール連絡いただき、教科書を郵送いただき、講義のための予習もしておりました。

私は大きな研究室を運営していますので、研究室のスタッフ、院生など一人一人と面談を行い、私が東大に異動した後の研究の方向性、進路について時間をかけて話し合いました。

 

しかしながら、その内定の連絡のしばらく後、「今回の人事選考を白紙にもどす、という判断に至りました」というメールを人事委員長の先生より、いただいてしまいました。

白紙撤回の理由は、私から「クロスアポイントメント」の提案をしたことでした(図1)。

この公募に応募しないか、と人事委員の中の先生よりお声がけいただいた当初より、私が応募する場合は兼任が必須である旨をお伝えしてありました。

私の研究室は規模がかなり大きく、かつ清浄度の高いマウスの実験施設を使用して研究をおこなっている一方、東大の駒場キャンパスには、私が共用できるクリーンなSPFのマウスの実験施設が存在しなかったからです。

そのため、採用の面接の際もしばらくは兼任が必要である旨はお伝えし、兼任は問題ない旨のご回答をいただいておりました。

「クロスアポイントメント」というのは兼任の一形態で、東大の五神総長がご提案されて全国に広まった新しい仕組みです。

普通の兼任ですと本務の大学が人件費はすべて負担しますが、クロスアポイントメントであれば、7対3、9対1などの割合で、それぞれの兼務先が人件費等を負担します。

この内定と兼任の可能性について、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)の学長と医学部長に相談する中で、せっかく兼任をして藤田でも研究をしばらく続けるのであれば、藤田からも人件費は出しますよ、それであれば東大も人件費が浮くし、Win Winですよね、とおっしゃっていただき、クロスアポイントメントを提案することになりました。

しかしながら、東大の駒場の教授ポジションは、研究や通常の学部生の教育だけでなく、教養課程(1、2年生)の教育や入試業務、その他各種委員会活動が大量にあり、専任でないと困る、ということで、クロスアポイントメントは認められない、という話になってしまったとのことでした。