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海外も注目!伝統の「ジャパン」漆を科学してわかった「すごい秘密」

縄文人も博物学者も愛用した理由

1万年に迫る耐久力をもち、日本文化を象徴する存在だった漆器や漆工芸品。いつしか日本人の生活から縁遠いものとなったが、いまふたたび、世界の愛好家から熱い視線を浴びている。

漆(うるし)とは、そもそもどのような塗装材料なのか──科学の目を交え、今日的な魅力に迫ってみよう。

ある日突然、フィリピンからの依頼が

東京都内にある津軽塗(つがるぬり)の工房「牧門堂(ぼくもんどう)」を構える塗師(ぬし)の牧野浩子(まきの・ひろこ)さんのもとには、さまざまな漆塗りの依頼が舞い込んでくる。

もともと多かった刀の鞘(さや)の製作や塗り直しに加え、変わったところではバイクのヘルメットなんていうのもある。

【写真】牧野さんの作品
  牧野さんが手がける漆塗りには、刀や小刀の鞘、バイクのヘルメットもある

しかし、最近とりわけ牧野さんを忙しくしているのが、万年筆への漆塗りの注文だ。しかも、日本以外に、アメリカ、シンガポール、香港、イギリス、フィリピン、タイ、スウェーデン、イタリアといった諸外国からの依頼が途切れなく続いている。

きっかけは、数年前に牧野さんが自身の漆塗り作品をインスタグラムに掲載したことだった。それを見たフィリピン人の万年筆愛好家から「自分の万年筆に漆塗りをしてほしい」と、突然の依頼が来た。

そして、広告代理店社長でもある彼女のインスタグラムに牧野さんの作品が掲載されると、口コミで一気に広まり、さまざまな国の人たちから注文が入るようになった。

【写真】牧野さんの作品を取り上げたSNS
  フィリピンの万年筆愛好家のSNSへの投稿が、牧野さんの漆塗りのファンを一気に増やした

万年筆コレクターのアイドルに

しかも、彼らの多くは高級万年筆のコレクターで、一人で3〜4本、多い人では10本以上も牧野さんに漆塗りを依頼している。なかには、日本に出張でやってくるたびに、彼女の工房に万年筆をごっそり置いていく人もいる。

「ごく基礎的な英語ですが、毎日いろいろな国の人たちとメールやSNSでやりとりしています。世界が本当につながっていると感じます」と牧野さん。

【写真】牧野浩子さん
  牧野浩子さん

気がつけば、日本に駐在しているペン好きの外国人から、ペンのことを語り合う公式・非公式の会に誘われるようになり、お客さんと塗師という関係を超えて、友人の輪が広がった。

ふしぎなことに、仕事にはもっぱらキーボードを使うであろうICT業界の人たちもいる。また、少し込み入った注文を受ける際に、SNSのグループチャットに入って、彼女の英語を助けてくれる人もいる。

牧野さんは「ふしぎな縁に支えられていることに感謝するしかありません」と笑った。