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明快!『ブロックチェーン』著者に訊く「この技術の意外な盲点」

『ビットコイン』本の著者が斬り込んだ
2019年1月に講談社ブルーバックスの1冊として刊行されるや大反響を呼び、ただちに重版が決定した『ブロックチェーン』。その著者・岡嶋裕史氏と、先行してブルーバックスで共著『暗号が通貨になる 「ビットコイン」のからくり』を上梓していた西田宗千佳氏との大型対談が実現した。

かつてビットコインをめぐる熱狂と陥穽を予見していた西田氏は、いま万能の技術であるかのごとく喧伝されるブロックチェーンに対して危機感を隠さない岡嶋氏に「ならばブロックチェーンの本質的な価値はどこにあるのか」と迫った──。

ブロックチェーンは「使いにくい技術」?

西田 ご著書『ブロックチェーン』、拝読しました。

この本の価値は、「ブロックチェーン」を存在させているハッシュという技術があり、さらに、「ブロックチェーン=暗号通貨、暗号資産である」という定義から離れることによってブロックチェーンは価値が存在している、ブロックチェーンは暗号通貨とイコールではない、とはっきり書かれていることにある、と思うんです。

岡嶋 ええ。おっしゃる通りです。僕も本書の執筆のお話をいただいたとき、西田さんと吉本佳生さんの『暗号が通貨になる 「ビットコイン」のからくり』があるので「ブルーバックスの中で書く意味がどこにあるんだろう、どこに価値を見出していけるんだろう」と悩んだところがあります。

ウェブメディアでは、すでに「ブロックチェーンと暗号通貨は別のものだよ」「暗号通貨そのものはハイプ(新規技術に寄せられる熱狂的な期待感)である部分が大きい」という評価がなされているのですが、一般的な人々にとってはそうではなく、まだ、ブロックチェーン=ビットコインであるし、ビットコインの価値やあり方と混同されています。

ブロックチェーンの将来になんとなく期待はしているけれど、それが通貨としての可能性なのか資産形成なのか技術としての価値なのか、ごっちゃになっていて「とりあえずやってしまえ」という部分があって。ですから一度整理したほうがいい、とは考えました。

岡島裕史 西田宗千佳岡嶋裕史氏(右)と西田宗千佳氏

西田 実は前著については、自分の中で大きな反省があるんです。それは、暗号通貨自体の安全性については言及できたものの、「取引所」の危険性、脆弱性について、強く言及することができなかったことです。

あの時点でそこをもうすこし予測できているべきだった、と反省しています。

岡嶋 いえいえ、当時はMt.Gox事件が起きた直後で、その後の暗号通貨をめぐる多くの事件が起きるずっと前でしたから、予測は難しい部分がありましたし。

あの時点で、「通貨とはこういうものなんだ」というところまで含めて書いておられたので、そこにつづく「ブロックチェーン」そのものの本を書くのは、とてもプレッシャーがありました(笑)。

西田 そうですか。私としては、「さすがセキュリティの専門家の方が書かれた本だな」と思いながら読ませていただきました。

ブロックチェーンにとって問題なのは、それがあまりに広く注目されすぎていることだと思います。これは「AI」でも「クラウド」でも、IT業界で流行る言葉すべてがそうなのですが、あらゆる事象がブロックチェーンで解決可能であるかのように誤解されてしまう。

ここが問題だと思うんです。

本当はどこに向いていてどこに向かないのかが、明確に理解されていません。特に、技術者ではなくビジネスのディシジョンメーカーの方々にわかりづらいことが問題です。

岡嶋さんの考える、ブロックチェーンの本質的な価値はどこでしょうか?