紀州のドンファン「遺言書」に浮上した、新たなミステリー

まさか、そんなことが…
吉田 隆

この遺言書、いうまでもなく野崎氏の遺産の相続に大きな影響を与える。

野崎氏の遺産の総額は30億円ともいわれているが、遺言書がない場合、相続する権利を持つのは昨年2月に野崎氏と結婚した若妻のSちゃんと、野崎氏の兄弟。その配分は4:1、つまり若妻に22.5億と、野崎氏の兄弟らに7.5億円が分配されることになる(きわめて単純な方法で計算していることをご容赦願いたい)。

ところが、遺言書には「遺産は田辺市に寄付する」とあるので、状況は一変する。この場合でも、若妻のSちゃんには法的な遺留分が認められているので遺産は入るが、遺言が有効である場合、Sちゃんには15億円、田辺市に15億円が分配されることになる。つまり、野崎氏の兄弟には配分されないのだ。

このことに対して野崎氏の親族の一人は、私に対してこう心情を吐露していた。

「この遺言書には不審な点が多くありますので、異議を申し立てることになるでしょう。親族はもともと遺産の件には全く関心はなかったのに、突然出てきた不可解な遺言書を見て、真相を解明することを決めました。別に遺産が欲しいわけではないが、幸助の遺した財産が全く関係ない第三者に渡ることは許されない、と憤っています」

この封筒は…

そんななかで、ドンファンの怪死についての取材を続ける筆者は、ある重要な情報を手にした。それは、X氏が提出した遺言書の「封筒」についての情報だ。

X氏が提出した遺言書の「封筒」

結論から言おう。X氏の証言では「遺言書は、親父から2013年の2月に送られてきた」というものだった。しかし、遺言書を入れたこの封筒は、その時には「存在していなかった」可能性が高いのだ。

どういうことか。「いごん」が入っていた封筒は、ドンファンの会社「アプリコ」の社用封筒である。私はアプリコの社用封筒をつくっていた印刷会社を突きとめ、その社長から事情を聴くことができた。

これまでの経緯を振り返ると、ドンファンが2013年の2月ごろに遺言を書いて、それをこの金色の社用封筒に入れ、X氏のもとに送った……と考えるのが自然だ。だが、この印刷会社の社長はこう証言するのだ。

「この金色の封筒は確かに弊社が野崎さんの会社に納品していたものですが、弊社がこの金封筒を作り始めたのは、2013年の暮れのことです。2013年の2月には、この封筒はありませんでした」

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