新生「オルビス」衰退危機を乗り越えた組織改革の舞台裏

変革の仕掛人が明かす
QREATOR AGENT プロフィール

女性は既に十分頑張っている

オルビスユーのリニューアルに先駆け、オルビスは2018年8月2日に新ブランドメッセージ「ここちを美しく。」を発表した。それもまた、既存の化粧品業界に対するアンチテーゼだという。

「僕らは『ヒーリングバイサイエンス(科学による癒し・ここちよさ)』というコンセプトを持っているんですけど、スマートエイジングを実現するには正直なところ、ストレスフリーに生きて、良質な睡眠を心がけたほうが、よほど肌の透明感やみずみずしさが引き出せるんです。

化粧品メーカーがこぞって“与える”ばかりのアンチエイジングに取り組むなら、僕らは、シンプルなスキンケアを必要なだけ行えば、本来の美しさが引き出されるということを、サイエンスの力をもって証明していきたい」

「だって、多くの女性たちは既にもう十分に頑張っているじゃないですか。女性活躍とか、輝く女性とか……『ヒアルロン酸を目尻に打って、シワを取る』とか、『あらゆる手を使ってアンチエイジング』とか……頑張っている人にもっと『頑張れ』というブランドばかりになってしまう。

もちろんそれを否定しようとは思わないけど、僕らは僕らとして、スマートエイジングの価値を貫きたい。人の健やかさや美しさを引き出して、オルビスとともにいい歳の重ね方をしていただけたら。そうやって本当にいいものを、一部の富裕層向けではなく、誰でも手が届く価格で提供することこそが、イノベーションだと信じているんです」

 

2020年3月には、デザイン・イノベーション・ファームTakramとの共同プロジェクトとなるコンセプトショップ(表参道)のオープンを予定している。2029年への長期目標を見据えるオルビスでは、「ここちを美しく」いられるための本質的な体験価値を模索しつづける。

小林氏は語る。

「働き方も変化していく中で、その人が心地よくいられるデザインやクリエイティブってなんだろうか、と。そうやって真のパーソナライゼーションを考えていくと、やりたいことが三つある。一つは、『販促』からの解放。毎日のようにDMを届けたり、キャンペーンを打ったり、『新規会員にはマスコットキャラクターの“うるにゃんグッズ”をプレゼント』というコミュニケーションは、たとえ新規のお客様を獲得できたとしても、本質的ではありません」

「二つ目は『美容への強迫観念』からの解放。美しさが画一的になってしまうと、『同年代で私にだけシワがあるから、何とかしなきゃ』と強迫観念にとらわれてしまうかもしれない。三つ目は『比較』からの解放。いろんな選択肢からあれこれ調べて、レビューや評価を比べて選ぶなんて、よく考えると本当に面倒。

しかも、その評価は人によって違うから、それが自分に本当に合うかどうかはわからない。そこに、本当の意味でその人が納得できるものを提案する本質的なパーソナライゼーションを実現していきたいんです。それこそが、オルビスが目指す未来なのです」

小林琢磨(こばやし・たくま)
1977年生まれ。2002年にポーラ化粧品本舗(現ポーラ)へ入社し、2010年にDECENCIA(ディセンシア)社長へ就任。2017年1月にオルビスへ異動し、取締役兼商品・通販事業担当に着任。翌年、2018年1月1日にオルビスの代表取締役社長に就任した。

取材+文:大矢幸世+YOSCA、企画編集:FIREBUG+武田鼎、写真:保田敬介