新生「オルビス」衰退危機を乗り越えた組織改革の舞台裏

変革の仕掛人が明かす
QREATOR AGENT プロフィール

データ・ドリブンからビジョン・ドリブンへ

前出の中期経営計画プロジェクトチーム主導で進められたのは、オルビスユーのリニューアルのみならず、組織改革だった。2018年1月の代表取締役就任とともに組織を再編成。組織を執行・営業部門とマーケティング戦略部門に整え、特にマーケティングにおける通販と店舗の顧客情報の連携とブランディング戦略の統合を推進したのだ。

そこで小林氏が打ち出したのは、「数値目標からの脱却」だった。

「売上・利益・キャッシュフローが財務目標、顧客満足度を状態目標とするなら、前者を3、後者を7くらいで見るようにして、経営会議では一切売上のことを口にしないようにしました。

それまで、多くの社員が通販事業を事業ドメインとして意識していた結果、内部データ・ドリブンで、施策ごとの数字を見ながらPDCAサイクルを回す会社になっていた。全て数字で見えるため、マーケティング精度が上がり利益率は高くなります。しかし一方で、数字に頼りきると新しいチャレンジができなくなる。

『過去のデータでもう結果出てるよ』『それで稼働率何%上がるのか、試算できる?』と、新しいことを否定してしまうんです。それに、通販と店舗では当然顧客の性質もコミュニケーションも変わりますから、数字から双方のオペレーションを最適化していった結果、通販と店舗で全く違う施策を行い、“ブランド”としての整合性が取れなくなっていました」

 

データ・ドリブンからビジョン・ドリブンへ――。いわば「ショック療法」のような改革は、システマティックな組織にカオスを生んだ。タテ割りから横のつながりが生まれ、少しずつ意識変革が起こった。

「もちろん、抵抗感を持つ社員もいたでしょうし、難しい判断の連続でした。

いきなりマジョリティになることはあり得ないんです。けれども一人ひとりと話していると、確かな課題意識を持っている社員が必ずいます。成熟期を迎えて守りに入った企業では、『こうするべきなのでは』という想いがあっても、なかなか打ち明けられなかったりする。そこに『なんでも言える』ような心理的安全性を築き、火を灯し、光を照らしていると、少しずつその光が広がっていくんです」

対外的なリブランディングと、それを支える社内のマインドセット。内外両軸の改革を行う1年を経て、昨年10月23日に新オルビスユーが発売。オルビス史上、販売2カ月でダントツの売上を記録し、新生オルビスにとって新たな「成功体験」となった。