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あるDV被害者の告白「殺されないと事件にならないと言われて…」

なぜDV男と「復縁・再婚」するのか

千葉県野田市の小学4年生の心愛さん虐待死事件について書いた「『千葉小4女児死亡事件』で痛感…日本の児童虐待をめぐる厳しい現実〜母親逮捕から見えてくること」に対し、さまざまなご意見が寄せられた。

その中には「母親なら自分の命をかけてでも子どもの命は守るべき」「DV夫と離婚してようやく離れられたのに、なぜ復縁したのか」という母親批判も少なからずあった。

そうした声を読みながら、2001年「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(いわゆるDV防止法)成立から18年が経過しているが、DV被害の実情等について十分に伝わっていないとも感じる。

加えて言えば、児童虐待とDV被害は一体であり、切り離して考えることはできないのだが、この「なぜ復縁したのか?」という疑問と答えにこそ、虐待とDVをつなぐ本質的問題が隠されているとも言える。

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なぜDV夫と復縁したか?

「DV夫となぜ復縁したか?」の答えは、大抵の場合は家族の離散から再生に至る時系列経過をみればわかる。

たとえば心愛さんの両親の場合、現在、報道されている情報をもとに復縁・再婚に至る過程は以下のようなものだ。

2011年夫のDVが原因で離婚。妻は心愛さんを連れ実家に戻る。
2015年11月から糸満市内のアパートで2人暮らしを開始。DV夫が頻繁に出入りするようになり復縁を迫る。
2017年2月に二人は再入籍。4ヵ月後の6月に次女が誕生する。

この「離婚→実家→独立→元夫の出入り→妊娠→再婚」という流れは、DVの典型的なパターンでもある。

離婚に至るまでも相当なコストをかけたに違いない。DV夫には重々懲りているはずなのに、再び復縁するマインドとはどこにあるのだろうか。

 

一般論としてはまずは母子の居場所の問題がある。

離婚女性が子連れで実家に戻ることは当初、実家の家族には歓迎される。

しかし、1ヵ月、半年、1年……と時を経るごとに、当然ながら関係性は変化して行く。

実家の親にとっては経済的負担が長期間になったり、娘から子どもの面倒をみるのが当たり前というふうな態度を取られたり等が重なってくると、不満が高まり、「早く出てってくれ」といった状態になることも多い。

となると、離婚女性の方もいづらくなる。

シングルマザーに対する公的援助等も生活するに十分ではない状況だったとしても、見切り発車で独立して生活を始めるケースも少なくない(もちろん、離婚後計画的に一旦実家で準備を整え、就職等の条件が揃って独立する人も多くいるが、ここではあくまでDVケースを取り上げている)。

独立後は友人等との交流も、実家にいる時より気兼ねなくできるようになるものの、それは元夫からのアクセスもしやすくなることを意味する。

DV被害を防止するためには、当事者以外の目が最も重要になるが、実家から出たことでその目の届かないところに母子は置かれるのだ。

心愛さんの場合は、実家を出てからもサポートは継続していたようだが、実家に同居している時に比べて危険度は格段に上がる。

そこにつけ込んで前夫は子どもへの面会を求めて、家に上がり込んだり、なかなか帰らないといったことが起こる。

ここでの前夫の振る舞いは2種類に分かれる。

一つは暴力を振るったこと等がなかったかのように、もしくは「反省して生まれ変わった」というようなことをいう「生まれ変わりタイプ」。

元々夫婦だったということは、それなりに好き合って結婚したわけだから、そのうち「やり直してもいいかな」と思うようになる。そして、妊娠パターンだ。

もう一つは、前回逃げられたことの経験値を積んだ上で、さらにひどい恫喝や暴力で支配しようとする「暴力増長タイプ」である。前夫を家から排除できない状況として半ばレイプ状態で妊娠、というのもある。

どちらも、DVの劣悪化には「妊娠」が伴う。前記事でも書いたように、妊娠から乳幼児を育てている間は母親は身体の自由がきかない。思うようには働けない。

出産は女性を肉体的にも経済的にも拘束できるため、DV加害者にとっては最も安心して暴力行為を行なえる時期だとも言える。「生まれ変わりタイプ」も妊娠して中絶できない時期ぐらいから暴力が再び始まるのだ。

心愛さんの両親の場合、再婚の時期が第二子出産の4ヵ月前というところに注目したい。まさにこのパターンにあてはまるからだ。当然周囲は「DV夫となぜ、復縁?」と聞くだろう。

心愛さんの母にとってもその問いこそが辛かったのではないかと思う。本当に好き合って復縁するなら妊娠する前に、もしくは妊娠直後に籍をいれるのが自然かもしれない。

さまざまな葛藤の中で妊娠6ヵ月を過ぎてお腹が大きくなったころに入籍というのは、周囲に対しても、自分に対しても「妊娠した。産むしかない」と最も納得する答えを提示することでもあり、言葉で説明するよりも、せり出したお腹を見せることでその先の質問は打ち切ることもできたのだろう。