「地震」を「震災」にしないために科学ができること

カギは「土地の履歴」を知ることだ!

2011年の東日本大震災でも、縄文海進時に海だった地域は津波の被害が大きかったと教授は指摘する。

気仙沼湾(宮城県気仙沼市)周辺の地図。網掛け部分は東日本大震災での津波の浸水範囲気仙沼湾(宮城県気仙沼市)周辺の地図。網掛け部分は東日本大震災での津波の浸水範囲を示す(国土地理院ウェブサイトの浸水範囲概況図72から一部を抜粋)
1917年の気仙沼同地域の1917年(大正6年)の地形図。大正時代の水田の地図記号は現在とは異なり、2本の縦線の下に1本の横棒が書かれていた(高橋教授提供)

「東日本大震災では、地震で倒壊しなかった住宅の多くも津波で流されてしまいました。

津波被害が大きかった宮城県気仙沼市を例に、津波浸水域と大正時代の地形図を見比べると、浸水域の大部分はもともと水田や湾内の海だったことが見てとれます。縄文海進時には海だったのでしょう。

近代以降の人口増を背景に低地を埋め立てて造成した住宅地が、津波に対しては脆弱だったのです」

上述した二つの大震災では「縄文海進」がキーワードだったが、注目すべき地形は海だけとは限らない。

「昨年の西日本豪雨では多くの地域で土石流が起こり、土砂や岩石が人家や田畑を襲いましたが、やはり地形が深く関係しています。

被害のあった広島市安芸区の矢野東地区は、実は土石流によって運ばれた土砂や石が堆積してできた土石流扇状地でした。もともと土石流が繰り返し起きてできた土地だったのです」

阪神・淡路大震災と東日本大震災、そして西日本豪雨。これらの災害における被害例は、私たちが住んでいる場所の地形や歴史が、いかに自然災害と密接に関連しているかを示しているといえよう。

人間が賢くなれば自然変動の「災害化」は防げる

高橋教授は、人間の知恵が自然災害の被害を大きく左右することを改めて強調する。

「私たち人間はさまざまな自然災害に『襲われる』としばしば表現しますが、本来は自然変動は良し悪しの無い、中立的な事象です。

自然変動が災害になるかどうかを決めるのは、あくまでも人間です。

地形や災害史から得られる知見を、自治体の都市計画やデベロッパーの開発計画、個人の土地選びで活用できれば、災害は確実に抑止できる。人間が賢くなれば自然災害を減らすことは可能なのです」

近代以前に比べて人口が爆発的に増加した現代、人は災害に対して脆弱な場所にも住まざるをえない。また、古くから伝えられてきた災害伝承には、すでに失われてしまったものも多い。しかし同時に現代は、学問や科学技術・情報技術の著しい発展を享受している時代でもある。

自治体、企業、個人が「土地の履歴」について正確な知識を持てば、「災害」を減らすことは可能である。

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