「ほら見て見て、私のウオノメ、こんなにでっかいの!」
「それではこの商談は、そのように進めさせていただきます」
「俺にクリリンぐらいの戦闘力があったら、気円斬で切り刻むところだったよ」
「そもそもさ、月刊ムーは秘密結社をつくりすぎなんだよ!」
「*%&?$“S+*A=+(ちょっとここでは書けない話)」
見渡せば、主婦、シニア、カップル、ゴスロリとコワモテのカップル、サラリーマン、フリーランサー、ホスト、作家、芸能人、インバウンド、経営者、ここでは書けない職業の人……。このような会話や人物たちが同居しているカオスな空間が、世界にいくつあるでしょうか。
喫茶室ルノアール(以下、ルノアール)。1964年に生まれ、現在東京都心を中心に約100店舗を構えるこの喫茶店チェーンは、世界でも稀有な「人種のるつぼ」です。
しかもこの現象が、なんと100店舗すべてで起きているのです。世の中に数多ある喫茶店の中で、なぜ「ルノアール」にだけそのような特異な現象が起きているのでしょうか。
私は「懐の広さ」が桁違いだからではないか、と思っています。サクッと言ってしまえば「何ごとも程々に良い感じで、かゆいところに手が届きまくる」ということなのですが、詳しくご説明していきましょう。
ちなみに上記の会話は、すべて筆者がルノアール店内で耳にした実話です。
ルノアールの特長を語る際、「席がゆったり配置されていること」に異論を挟む余地はないでしょう。隣の客と肘が触れ合うことは絶対にありませんし、ノートPCを開いたら誰かにガッツリ覗かれるなんてことも、ほぼありえません。
実はルノアールには、客同士のプライベート空間を確保するために「1坪あたり1.5席」という基本ルールがあります(※超都心部の狭小店舗は除く)。
席ごとのパーソナルスペースが広いため、面接やヒソヒソ話、時には示談などの「ちょっと込み入った話」をしても周囲に聞かれる心配が少ないのです。つまり、「込み入った話をしたい事情を抱えた人が皆、ルノアールに集まる」というわけです。
この「1坪1.5席ルール」が生まれた背景は、ルノアールが創業間もない頃にさかのぼります。「新店舗をオープンさせる際に、内装にお金をかけすぎて、椅子やテーブルを予定通り買い揃える予算がなくなったため仕方なくゆったり配置したところ、客にウケた」という冗談のような実話が、時を経てルール化されていったようです。
単位面積あたりの費用対効果を考えてみても、あえてこの方針を貫き続ける姿勢は見事というほかありません。