物理学にとってAIは新たな「神」になるか

新しい時代の「「物理学者」」の姿とは
池内 了 プロフィール

AIが「神」になった時代の物理学者の姿とは

むろん、それは現在の人間世界の「神」と同じようなトランプやパチンコで未来を占う「神」ではない。おそらく「強いAI」が頼りにする「「神」」は、トランプ占いの結果を見通し、パチンコの玉がどこに行くかを予知することができるだろう。

未来に対して、より詳細な分析をして不安や恐れを小さくしてくれる「「神」」であるからだ。そうなると、もはやいかなる難問も「強いAI」が解いてしまうため、人間世界の「神」も「物理学者」も失業せざるを得なくなる。

 

ここで「物理学と神」のゲームはいったん終わるのである。
 
ところがそうはいかない。「神」が「強いAI」世界の「「神」」にとって代わられたように、「物理学者」は「強いAI」世界の「「物理学者」」となって再登場するであろうからだ。

「物理学と神」の相克は、「「神」」と「「物理学者」」の相克となって続くのである。もっとも、その場合の相克内容が、「神」と「物理学者」との時代より高級となっているとは限らない。

「強いAI」にも必ず限界があるから、「「神」」には必ず弱点があり、「「物理学者」」はそれに気づくことになるに違いないからだ。

そうこうするうちに、「強いAI」は「さらに強いAI」に進化するであろう。

その結果、「さらに強いAI」には未来への恐れや対人関係の不安を、より少なくする能力をもつ「「「神」」」が登場し、基本定数の由来とか相互作用の数のような難問を解決するが、また新たな難問を考え出す「「「物理学者」」」が現れるに違いない。

というふうに、相克は永遠に続くのではないか。「さらに、さらに、さらに……強いAI」と「さらに」がいくら増えても、解けざる心の闇と物理学の難問は絶えることなく続くだろうからだ。

何だか当たり前の結論のようになったが、要するにAIがいくら進化しようと恐れることはない。ユートピアでもディストピアでもなく、現在と同じことが繰り返されるだけと考えればよいのである。

ただ、そこに生きる人間がAIにこき使われないよう、高級にならねばならないとは思うが。
 
以上、幸せにもシンギュラリティを迎える頃にはもう生きていない私の戯言である。