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「自己破産デマ」被害の漫画家が語る菅田将暉ドラマ『3年A組』の力

バイトテロやバカッターへの魂の叫び

連日のように投稿され、報じられる「バイトテロ」「バカッター」動画。くら寿司にセブンイレブン、すたみな太郎など、大手飲食店が心ない投稿によって多大な被害を被っている。自らもネットへの投稿に端を発した「自己破産」のデマに苦しんだ経験を持つ漫画家の折原みとさんは、いま話題となっている菅田将暉主演のドラマには、このようなネットリテラシーが必要な時代に向けた、魂の言葉が散りばめられているという。

『バトル・ロワイヤル』かと思ったら

今、日曜日の夜が熱い!何が熱いって、菅田将暉主演の学園ドラマ『3年A組~今から皆さんは、人質です』(日本テレビ、日曜夜10時30分~)だ。

Huluでは1話から見ることができる

ついこの間まで生徒役を演じていた菅田将暉くんが、25歳にして晴れて教師役に昇格、熱演しているこのドラマは、かなり荒唐無稽なストーリーだ。

舞台はとある私立高校。卒業を10日後に控えたある日、菅田将暉扮する美術教師、柊一颯(ひいらぎ・いぶき)は、3年A組の生徒29人を人質にして学校に立てこもる。一見頼りなく穏やかな柊先生は、「ザコキャラ」と言われ、生徒たちからナメられてきた。そんな柊が突然バイオレンス教師に変身。ダイナマイトで校舎の一部を破壊し、生徒たちを教室に閉じ込めたのだ。

実は、柊はかつて特撮ヒーロー番組のスーツアクターをしていたほど、優れた身体能力を持っていた。柊は生徒たちにある「課題」を与え、それをクリアできなければ「お前たちの中の誰かに死んでもらう」と言い放つ。

この冒頭部分だけを観た時点では、生徒たちが生き残りをかけて殺し合う『バトル・ロワイヤル』や、サイコパス教師が生徒を殺戮しまくる『悪の教典』のような、過激で殺伐とした物語を想像していた。が、何話か視聴を続けていくとどうも違う。

確かに、柊が不気味に生徒たちを脅し、暴力をふるうシーンもある。生徒をナイフで刺したり、ダイナマイトでむごたらしく爆破したり……。しかしその一方で、毎回彼は生徒たちに、時に涙を流しながら魂のこもった説教をするのだ。その真剣で熱い台詞は、まるで往年の「金八先生」のよう……!

鬼気迫る演技と魂の台詞

人殺しのくせに説教とはこれいかに? しかし回が進むにつれて次第に真実が明らかになっていく。柊は本当は誰も殺してはいなかった。作り物の手足や偽の血液を使って、生徒たちを騙していたのだ。一体、何故?

柊のクラスでは、半年前にひとりの女性徒が自殺した。柊の目的は、彼女の死の真相をつきとめること。そして、彼女の死を通して、生徒たちに現実を直視させ、心の弱さを抉り出し、正しい道に導くこと。実は、柊の身体は不治の病に冒され、残された時間は長くはなかった。卒業までの10日間、柊は命をかけて「最後の授業」をしようとしていたのだ。

よく考えるんだ。自分自身で考えて答えを出すんだ
悪意にまみれたナイフで、汚れなき弱者を傷つけないように、変わるんだよ! 変わってくれ……」

毎回繰りだされる柊先生の、どストレートな説教が凄い! 菅田将暉の鬼気迫る演技とも相まって、思わず胸を揺さぶられてしまう。

「ネクストブレイク枠の若手イケメン俳優や女優たちが大量出演している学園もの」として、最初は気軽に観始めたドラマだった。正直、突っ込みどころは結構ある。生徒29人を人質にとって教師が学校に立てこもったら、報道特別番組クラスの大事件だ。最初に校舎の一部が爆破された時点で、たちまち警察やら消防やらマスコミが押し寄せて大騒ぎになるはずだが、その部分はあまりリアルに描かれてはいない。

事件の大きさに対して、それを取り巻く周りの状況にリアリティがないのが難点だが、そこは目をつぶっておこう。このドラマは、教室の中での教師と生徒との心のぶつかり合いを描くことが目的なのだろうし、事実、それだけでも十分見ごたえがある。

ところで、立てこもり事件のキッカケとなった女生徒の自殺だが、それには、ネット上に投稿されたある動画が大きく関わっている。前途有望な水泳選手だった彼女は、悪意のフェイク動画によってドーピング疑惑をかけられ、世間からのバッシングを浴びる。挙句にクラスメイトからも無視され、孤独のうちに亡くなってしまったのだ。

彼女を死に追いやった原因のひとつひとつは些細なことだ。他の女子に友達を奪われた女生徒の嫉妬。交際を断られ、傷ついた男子生徒のプライド。恵まれた環境にいる人間への妬み、ネットの情報を鵜呑みにし、踊らされる軽率さ。ひとりひとりの身勝手さや想像力の欠如が、よってたかってクラスメイトの命を奪ってしまったのだ。