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大和証券・中田社長「証券会社は『格差問題』にやるべきことがある」

社長の決断で「子供の貧困」に取り組む

子供の貧困問題が深刻化している。全国各地でその解消に向けてNPO法人が活動しているが、その多くが運営資金の面で苦悩している。こうした状況に対して、企業はどう向き合っていくべきなのか――。

「こども応援基金」を独自に立ち上げ、支援活動に取り組んでいるのが大和証券グループ本社である。「個人的な体験がきっかけで子供の貧困と向き合うようになった」と言う最高経営責任者(CEO)で大和証券代表取締役社長の中田誠司氏に話を聞いた。

(取材・文:浪川攻/写真:西崎進也)

〔photo〕インタビューに答える中田社長

社長になったらやろうと決めていた

――子供の貧困問題などに取り組んでいますね。これは、どのような考え方で、いつから始めたのですか。

個人的な体験から話しましょう。娘が入園した幼稚園のすぐに横に養護施設がありました。そのとき、入園式で親子が喜んでいる光景のまぢかに養護施設があることに愕然としたわけです。

そこで、養護施設の子供たちのために何かできないだろうかと考えて、養護施設の子供たちに贈り物を送りました。その後も養護施設などへの支援、寄付を続けてきましたが、きっかけとなったのはこの体験でした。

 

妻は結婚前には役所で障がい児をケアする仕事をしていたこともあって、子供の問題には高い関心を寄せてきました。娘はその後、大学で幼児教育、幼児支援活動のサークルの代表を務めるなどしていて、家庭では、2人が熱心に子供の問題を議論していました。私はそれを見聞きしていて、子供の貧困が深刻化し、7人に1人の子供が貧困に瀕している実情について実感をもって知ることができたわけです。

そこで、自分も何かできないかと改めて考え始めたのですが、当時、私は営業本部長であり、さらに同本部を管掌する副社長という立場が続いて余裕はなく、もちろん、組織を動かすという立場でもなかったので、個人的に寄付を続けることしかできませんでした。しかし、会社でも何かできないものかとずっと思っていました。

2017年1月末に社長就任を正式発表したのですが、当然ながら、それよりも早い時期に内示を受けていました。以後、トップとしてビジネスラインをいかにしていくのかを考える日々となりましたが、それと並んで考え続けたのが子供の貧困問題に向けた企業としての取り組みです。まずは社長権限で始められることからスタートしようと決めていました。

――それが「こども応援基金」となったわけですね。

1月末の社長就任会見を終えて、2月早々には広報部と経営企画部を召集し「子供の貧困問題に取り組むから、具体的な策を検討してくれ」と指示しました。その後、彼らが提案してきたのが、信頼できるNPO法人などを選定して、そこへの資金支援を通じて取り組むという内容でした。もちろん、すぐにゴーサインを出しました。

具体的には、助成金を提供する基金を作って、とりあえず、5年間に1億円程度を拠出するというものです。助成団体の選定は厳格、かつ、客観的でなければいけないので、専門家で構成する審査委員会を設置し、同委員会が選定したNPO法人などに毎年約300万円の助成を行なうという仕組みにしました。

――役員会ですんなりと決まったのですか?

いいえ、私の一存で決めました。役員会の承諾を得る必要のないCEO決裁で実現できる金額ラインに設定しましたから。