「負担だ」と、話し合えること

「避妊は大切なことですが、男にしたら負担だ、という考えになってしまう人もいるでしょう。どうあがいても、妊娠の当事者ではないわけですし」

ジネさんは正直な気持ちをそう語る。

「だからこそ、二人で話すのが大切だと思うんです。妊娠は女性しかしないけれど、その前のセックスは、男もするものだから。それに恋人とセックスの話をするのって、単純に楽しいことでしょう?」

あっけらかんとしたジネさんの言葉に完全同意で頷くことは、私にはできなかった。セックスも避妊も私にはまだ「ひめごと」の意識が抜けず、フランス人の夫相手に正面切って話すのは、なかなか骨が折れることだった。

私自身はピルが体質に合わず、それこそ毎日の摂取が精神的にも「負担」だったこともある。試行錯誤しながら夫と二人で話し合いを続け、パートナーシップ14年目の今では、私も夫も納得のいく形で、負担を分かち合うことができている。私たちはお互いが大切で、避妊も、二人にとって大切なお題だから。

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幸い日本は、男性の避妊意識が高い国だ。これは性病予防の観点でも維持したい傾向である。その美点はそのままに、女性も主体的に、避妊で「身を守る」意識を持てればいい。避妊と性病予防は一枚岩で、かつ男女共通の問題であると、男も女も理解する。そうして風通しよく連携できれば、望まない妊娠がもたらす悲劇は確実に回避できるのだ。

そのためには、避妊をより身近に捉えられる性保健教育が必要だろう。性=セックスの快楽という偏った認識ではない、健康を左右する身体機能と、それを維持するための教育として。

また、中絶をより女性に負担の少ない選択として整えることも重要だ。アフターピルは現在、スマホ診断・処方など対応のスピード化が厚労省で検討されているが、必要な層に届くためには、医療保険の対象化の議論も進めてほしい。

妊娠を継続できない事態で女性の負担を軽減できる、妊娠中断薬の認可も同様だ。薬物中絶に関する刑法の減力化・無効化も、忘れたくないポイントだろう。人生を左右する重大事である「生殖」を、より辛くない環境で、よりオープンに考えられるように。

蛇足を恐れつつ、最後にひとつ、ピルやコンドームより有効な避妊法について触れておきたい。それは「セックス自体をしないこと」である。そして日本は、世界に名だたるセックスレス大国だ。避妊の責任が男性に、妊娠の負担が女性にだけ偏り、それを語り合うこともままならない日本社会の在り方は、セックスレスの現状と無関係とは言えないのではないだろうか。

女性が避妊を主体的に手がけるフランスは、先進国の中でも有数の「子どもが生まれる国」でもある。強制されずとも、女性たちが自主的に「産むこと」を選んでいる国。そこでの妊娠・出産事情はどうなっているのか。次回の連載では「妊娠・出産」をテーマにお送りしたい。