そして私は25歳まで、幸いにも、望まない妊娠を経験しないまま、日本で生活した。それなりにあった交際ではみんな、男性が避妊を「してくれた」。私は自分でコンドームを買ったことすらない。

男性たちは「妊娠したくなきゃ、お前が自分で避妊しろよ」とは言わなかった。バイト代やお給料の中から、当たり前のようにコンドームを買い、自主的に装着していた。そんな彼らと縁があったのは、たまたま運がよかっただけだ。

そして今の私には、避妊を当たり前にしていた男性たちの意識が、とてもありがたいものに思えている。25歳までの私が妊娠しなかったのは、男性が避妊をしていたから、それ以外に理由はない。女性に避妊を任せっきりにする「無責任な」男性たちは、もちろん日本にもいる。だがコンドーム使用率85.5%の数字は、少なくはない日本人男性が、避妊を「自分の責任」と考えていることを示しているのだ。

避妊は、男と女の両方を守る

避妊を女性が管理するようになったら、男性はどうするのだろう。その「責任」を放棄してしまうのだろうか。

フランスでは実際、70年代から80年代後半に、男性の避妊意識が著しく落ちた時期があった。フェミニズムメディア「ファム・ディシ・アイユール」の50代男性編集長ピエール=イヴ・ジネさんは、当時をこう振り返る。

「避妊はピルで、女の子がするものでしたから。若いクソ野郎だった僕も、女の子に任せっぱなしだった時期があります。今から考えると、ほんとうにアホでしたがね!」

イヴ・ジネ氏

それが一過性のものに終わったきっかけに、エイズの流行がある。それも最初は同性愛者特有の病気と思われていたが、実態が知られるにつれ、男性側にも避妊を考え直す動きが広がったのだそうだ。

「現代では、『まずコンドーム 、それからは二人で相談』という流れが一般的です。性病予防の観点からも、避妊は『男女両方を守るもの』という意識が定着してきました。僕も20代の息子たちにコンドームを常備させていますよ。子どもができたら人生が激変するのは、男性も同じですからね」

前回と今回の記事では、女性主導で避妊を行うことの意味を主に考えてきたが、フランスではそれと同時に、コンドームを使うことのメリットについても議論されてきたというわけだ。そして、教育がそうした流れをサポートしてきた。

フランスでは2001年より、小学校から高校まで年に3回、性保健の授業が義務付けられている。内容は年齢によって変わり、まずは男女の体の違いや、自分の体の大切さ、それを守ることの必要性を学ぶ。セックスと避妊を取り上げるのは中学生以降だ。

そして男女とも18歳の成人前には、避妊・中絶を含めた「性の健康と権利」の知識パッケージを身につけさせる。その甲斐あってか2000年以降、初体験でコンドームを使った男女の数は、8割以上をキープしているという。

さらに若年層の性病予防を推進するため、昨年秋には、コンドーム一種類が医療保険の払い戻し対象となる方針が発表された。処方箋での購入が必要なので効果のほどは議論されているが、国が女性避妊と並び、男性避妊を重要視していることが表れている。