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フランスと日本の「避妊と中絶」は、こんなにも違っていた

フランスに探る男女連携社会の作り方②

男女平等を力強く推進し、「グローバルジェンダーギャップ」のランキングを短期間のうちに駆け上がったフランス。本連載「フランスに探る男女連携社会の作り方」は、男女の〈連携〉の在り方を同国に学ぶ。

前回の記事では、フランスでの避妊、中絶について見た。避妊をする場合、女性がピルなどの医学的手段を使うケースが多数派であること、中絶手術に保険が適用されることなどを紹介しつつ、その背景に「女性が妊娠や出産を自己決定する」という思想があることを指摘した。

今回は、フランスの制度を参照しながら日本の現状を概観し、同国から学べることを考える。

(これまでの連載記事はこちらから)

日本はコンドーム使用率85.5%

避妊が「妊娠しない権利」と呼ばれる国に19年住んで、母国日本を見ると、妊娠・出産周りの出来事が違って見えてくる。

2015年の実態調査(日本家族計画協会、二つまで回答可能)を見ると、「避妊をしている」と答えたのは回答者の50%。そのうち大多数が男性側の避妊で、85.5%がコンドーム、次いで膣外射精16.5%が続く。女性側の避妊である「オギノ式」は6.1%、ピルは4.6%と明らかに少数派。

フランスの考え方から見れば、大多数の女性が「避妊を自分でコントロールしていない」状況だ。

その背景には、日本社会における妊娠=「おめでた」の固定観念があるのではないか。妊娠とは女性にとって問答無用の「良いこと」で、誰もが願うに決まっている、絶対的な幸福として扱われがちだ。

その条件下では、「妊娠しないという選択をすること」が「女性の権利」と認識されにくい。結果、妊娠や出産をめぐって、女性の自己決定の範囲が、狭くなっているのだ。

 

その視点から胎児遺棄事件や、妊娠による女子中高生の退学問題を考えるとどうだろう。妊娠は一人ではできないが、それらの事件の中心にはいつも、女性しかない。もし日本社会で妊娠が絶対的な「おめでた」ではなかったら。その前提で彼女たちが、自分で避妊をしていたら。望まぬ妊娠に至っても、早い段階で自己負担なく、妊娠を止める手段があったら。妊娠出産をめぐる悲劇の数は、ずっと少なかったはずだ。

「授かり婚(できちゃった婚)」の多さも、違った意味合いを帯びて見えてくる。厚労省が平成22年に発表した「出生に関する統計」の「結婚期間が妊娠期間より短い出生の傾向」調査では、結婚夫婦から生まれる第一子の約25.3%が「授かり婚」という数字が出た。

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母親の年齢別で見ると、15~19歳では8割、20~24歳では6割の出生が「授かり婚」夫婦。妊娠が結婚のきっかけになることや年齢自体に是非はないが、その結婚が継続しないと、年若いシングルマザーが増えることになる。実際、厚労省の「離婚に関する統計」では、結婚年齢が若ければ若いほど、離婚の確率が高いことが示されている。

そして今の日本では、シングルマザーに否応無く貧困問題が張り付いてくる。平成30年の厚労省報告によると、ひとり親世帯の86.8%は母子家庭。その平均年収は、父子家庭420万円に比べ243万円と格段に低い。ひとり親になる理由の約8割は「離婚」だ。そして日本には、離婚後の養育費を、強制的に徴収する制度もない。ひとり親への支援体制は、まだまだ発展途上だ。

「授かり婚」は断じて、悪いことではない。それで円満な家庭を私自身何組も知っているし、結婚も妊娠も、順調にいけば慶事だ。だがその末に離婚や経済的困窮の高いリスクがあることは、データが確かに示している。自分がそのリスクを被る立場になると、若い女性たちは一度でも、想像したことがあるだろうか。 

ここでもやはり私は、考えずにいられない。もし彼女たちが、自分で避妊をしていたら。妊娠が受動的なハプニングでも、絶対的な「おめでた」でもなく、人生設計を考え合わせ、慎重に選び取るものだったら、と。

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