撮影/岡田康且

32歳で現役復帰した、高橋大輔の決意

「やっぱりスケートが好きだから」

2010年バンクーバー五輪の銅メダリスト、同年に日本人男子として初めて世界選手権を制した男子フィギュアの「レジェンド」は、惜しまれながらも2014年に現役を引退。それから4年後の2018年、高橋は32歳にして現役復帰し、全日本選手権で準優勝という見事な成績を残した。30を過ぎ、新しい形でスケートと向き合うことになった、現在の心境とは。

今回、週刊現代2月16日・23日合併号のモノクログラビア『高橋大輔 32歳の決断』で、紹介しきれなかったエピソードを再編集。アザーカットと共にお送りする。

取材・文/田中亜紀子、撮影/岡田康且

復帰は正直怖かった

――昨年は4年ぶりに現役復帰。年末の全日本選手権では、フリーを最終グループで滑るという目標を達成するどころか、準優勝という鮮やかなシーズンとなりました。

高橋:「再生」の年になったと思っています。引退後、迷いもあって、なかなか第2の人生にうまく踏み出せている気がしませんでした。今回の復帰は、自分のスケートを一から作り直すという気持ちだったのですが、ようやく新しいスタートを切れた気がします。

――レジェンド的存在である高橋さんが国際大会の復帰枠も使わず、地方大会から全日本選手権を目指し戦う姿は新鮮でした。圧倒的な存在感の演技はもちろん、以前より質の高い4回転ジャンプも取り戻しましたね。

高橋:自分のスケートを取り戻すことが目的だったので、最初から世界で戦う復帰枠のことは考えてもみませんでした。若い人に交じり、近畿ブロック大会から戦ったのは、本当におもしろかった。表現だけならアイスショーで魅せられます。でも、現役として戦うからには少しでも上に行きたいので、ジャンプも自分の限界まで挑戦するつもりで挑みました。

 

――ご自身でやりたい気持ちになったとはいえ、選手として4年間のブランクがあいた、32歳での復帰。さらに右膝前十字靭帯断裂および半月板損傷という、選手生命に関わる古傷を抱えた身での復帰に不安はありませんでしたか?

高橋:古傷はずっとつきあってきて、絶対に邪魔してくるとわかっていたので、不安より、そこに合わせられる体作りに集中するだけでした。それよりも、これまで自分が培ってきた「評価」が、復帰で「高橋大輔、こんなもんだったか」と思われてしまう恐怖感が大きかった。

過去にとらわれていた部分はありましたね。でも引退からの4年間、いろんなことに挑戦し、何事も経験してみないとわからないと実感したし、どんな選択でもリスクはついてくる。何より現役をもう一度やりたい気持ちが、恐怖感に打ち勝ったんだと思います。

――復帰してから、ぎっくり腰や肉離れなどを起こし、なかなか思うように練習ができなかったそうですが、不安はなかったのですか。

高橋:できて当たり前と思っていたらあせるかもしれないけど、今回は「できたら万々歳」のスタートだったので、不安は感じませんでした。4年間、アイスショーには出演していたので完全なブランクではありませんでしたし、むしろ「前だったらこのぐらい練習したらもっとできた」と感じたことがブランクなんだと。そんな今の自分の状況を受け止めながら次に進んでいきました。