女性による避妊率71.8%の意味

ピルを飲むことが、なぜ「自分を守る」ことになるのか。当時の私は正直ピンと来なかった。が、二人の子を持った今となっては痛いほど分かる。

子どもは、人生を大きく変える。素晴らしいことも多いが、負担も多い。しかも前回の記事で書いたように、その負担の多くはまだまだ、女性にばかり偏っている。そして子育ては、辛いからと言って「ハイやめます」とは放棄できない、責任重大な案件だ。条件が揃っていない環境での妊娠は、生活の危機にすらなる。

「学業、仕事、生活スタイル。子どもを持つことで、人生の全てが大きく影響を受けます。しかも妊娠は女性の体にしか起こらないこと。だから女性が自分で、コントロールすることが大切なんです」

そう語るのは「フランス女男平等高等評議会」のクレール・ギュイロー事務局長。男女格差是正の観点から政策を監視し、提言する公的機関で、妊娠・出産も重要テーマの一つだ。

女性避妊の重要性は、社会にも浸透している。2016年に15〜49歳の避妊対象女性(妊娠を望まず、かつその可能性のある女性)に行われた調査では、71.8%が自分自身に施す医学的避妊(ピル、パッチ、子宮内避妊具など)を選択。その大半は医療保険の適用範囲内で、自己負担35%で利用できる(日本ではこれらの避妊手段は保険適用外。次回で詳細)。

一方コンドームの使用率は15.5%で、こちらは全額自己負担だ。使用機会の多くは「その相手との初めての性行為」で、避妊だけではなく、性病予防の意味合いが強い。私の夫がプレゼンした「ステディになったらピル」は、データから見ても、フランスでごく一般的な感覚なのだ。 

女性避妊の普及は、社会における男女平等の大きな指標でもあると、ギュイローさんは言い添える。

「男性が子孫を増やすには、女性がどうしても必要です。だから人間の長い歴史上、男性優位社会では、女性避妊や中絶はいつも禁止されてきました。自分で産めない男性が確実に子を持つには、女性の出産を支配するしかない。つまり女性が自分で避妊できる、妊娠出産するかしないかを決められる社会は、女性が男性に支配されていない、という証でもあるんです」

ギュイロー氏

避妊・中絶が「権利」になるまで

フランスでは避妊だけではなく、人工妊娠中絶も医療保険でカバーされる。

中絶手段は二種類。7週までの妊娠中断薬(ミフェプリストン)、14週までの中絶外科手術を自己負担無料で受けられ、成人女性なら他者の付き添いは必要ない。また性交後72時間以内ないし120時間以内摂取の緊急避妊薬(レボノルゲストレルとウリプリスタル、通称アフターピル)は未成年・医療保険未加入者は無料で、保険加入者は処方箋があれば自己負担35%で入手できる。処方箋なしの場合でも、販売価格は3〜7ユーロと手頃だ。

15〜18歳の未成年の中絶には成人の付き添いが必要だが(近親者でなくとも良い)、緊急避妊薬に限り、街角の薬局や校内医から匿名・無料で入手できる。これは未成年者向けの特別措置だ。妊娠の理由が合意のセックスだけではない以上、「なぜ妊娠してしまったか」よりも、その妊娠が女性の心身・人生に及ぼす影響を重要視するためだ。

とはいえ妊娠・出産が「女性の権利」として確立するまでには、長い時間がかかった。フランスはもともとキリスト教的父権主義が強い、ガチガチの男性優位社会だ。1965年までは、「既婚女性が就職するには夫の同意が必要」というトンデモ法律まであった。