男女平等を力強く推進し、「グローバルジェンダーギャップ」のランキングを短期間のうちに駆け上がったフランス。本連載「フランスに探る男女連携社会の作り方」は、男女の〈連携〉の在り方を同国に学ぶ。

第1回となる今回は、避妊と中絶について紹介する。フランスでは避妊をする際、ピルを使うなど「女性主導」で行うケースがほとんどだという。日本の感覚とは随分違うが、実はそこに深い理由が隠されていた。

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25歳でフランスにやってきて以来、男と女に関して山ほどのカルチャーショックを受けてきた。その中でも安定のベスト3に入るのが「避妊」だ。これは在住20年目の今振り返っても、変わらない。

日本で生まれ育った私にとって、避妊と言えばコンドーム。しかもそれは十中八九、男性が用意するものだった。知識としてはオギノ式(いわゆる「安全日」計算)もあったが、自分で活用したことはない。フランスに行った後も同様で、「避妊と言えばコンドーム」は世界の常識なのだと思い込んでいた。

その思い込みがまったくの誤解だと知ったのは、遡ること14年前。夫と交際を始めた当初のことだ。

避妊、私がするの?!

彼(現夫)とは移動3時間ほどの遠距離恋愛だった。最初は月に1回だった逢瀬が月に2回となり、付き合い始めて2ヶ月経つ頃には、お互いの家で隔週末を過ごすようになった。そんなある日、まるで食料買出しの相談のように、彼が言った。

「ねえ、ピルはいつから飲むの?」
「……?!」

その意味がすぐに理解できなかったのは、私のフランス語能力のせいではない。私はそれまでピルを飲んだことがなく、当時の拙い認識の中では、ピルは生理不順の治療薬だった。生理不順でもない私が、なぜピルを飲まねばならないのか。そしてなぜそれを、男のこの人が言い出すのか。動揺しつつ、なぜ今その話になったかを聞いた。しれっと答えた夫の言い分はこうだった。

ーーお互い性病がない。
ーーお互い恋人同士と認定しあった。
ーーけどまだ君と子どもを持つことは考えられない。遠距離でもある。
ーーそしてセックスはコンドームなしの方がいいに決まっている。
ーーコンドームは感覚面だけではなく、経済的にも手間的にも自分には負担だ。
ーーちゃんと付き合うことになった今だから、この話ができると思った。

そして「フランスでは、ステディな恋人同士になったらみんなピルで避妊するんだよ」と。

当時夫は25歳、私は30歳。25歳の青年が、付き合い始めて2ヶ月で、子どものことまで考えるか?避妊が必要というのは分かるけれど、お前がナマでしたいがために、私が薬を飲むのか?

フランス女性の大半はピルを飲んでいる、それは知識としては知っていた。けれど我が身となれば話が違う。女性だけが避妊をするなんて!男の責任はどこにあるんだ!半ば憤慨気味に周囲の女性に相談すると、なんと全員がピル使用者だった。そのうち一人は半ば呆れ気味に私を見て、こう言った。

「あなたねぇ。自分の体のことでしょう。今妊娠して困るのはあなたでしょ?自分は自分で守りなさいよ!」