TWICEのパフォーマンス(Photo by gettyimages)

K-POP市場は本当に巨大か? ファクトで分析するその「実力」

彼らが「海外進出」にこだわる理由

BTSが2017年にBillboardのトップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞、2018年にBillboradチャートで1位を獲得して以降、K-POPの国際的な成功について、世界中のメディアからの注目がますます高まっている。

しかしそもそも「K-POP市場」あるいは「K-POP産業」はいったいどれくらいの規模なのか? 実際のところ大手事務所の経営は順調なのか? 株式市場からはどう評価されているか? 

K-POPの「成功」を論じる上で前提となる基本的な数字、ファクトについて整理されている記事は意外と少ない。全4回の連載となる本稿では、それを試みてみよう。

もっとも、筆者は韓国語が読めないため、アクセスできる資料は日本語と英語に限られていることをお断りしておく(韓国のライブ市場に関する韓国コンテンツ振興院および韓国最大のチケット販売サイト「Interpark」のデータに関しては、コミックポップエンターテインメント社の宣政佑氏に調べていただいた)。

 

はじめに:ここがヘンだよ「K-POPの常識」

K-POPに関する「通説」にはおかしなものがいくつもある。まずはこれらを片付けてから本題に入ろう。

典型的なものに「韓国は日本と比べて国内市場が小さいので外需、とくに隣に世界第2位の音楽市場を持つ日本に活路を見いだした」というものがある。

〈世界第2位の市場規模を持っているわけですから、日本は外に出ていく必要も、出ていくべき市場もない。韓国は市場が狭いので出ざるをえない〉(週刊東洋経済2005年9月24日号、104p「『韓流の王』がもくろむアジア市場”統一”」イ・スマンインタビュー)

“In Japan there are 100 million consumers, but in Korea we have only 50 million. That’s why entertainment companies have no choice but to look at foreign markets if they intend to grow.” (Park Jin-young, interview by Son Seok-hui, News Room, JTBC, May 5, 2015.)

引用したとおり、BoAや東方神起、少女時代、EXO、NCTなどを擁する韓国最大の音楽事務所であるSMエンターテインメント(以下SM)創業者のイ・スマンも、TWICEやGOT7、DAY6などを擁するJYP創業者のパク・ジニョンも言っている。

だがこれは「事実」というよりもK-POP事業者たちを駆動してきた「信念」である。

SM創業者のイ・スマン(Photo by gettyimages)

「内需が小さいから外需を求める」が音楽産業に対して一般的に成り立つのであれば、たとえば北朝鮮の音楽は中国やロシアに食い込んでいなければおかしい。台湾やベトナム、モンゴルなどの音楽もK-POP並みに日本に進出している、ないし、少なくとも果敢に進出が試みられていていいはずだ。だが現実はそうではない。

2017年の世界の貿易依存度(GDPに対する輸出額の比率)ランキングは1位香港、2位シンガポール、3位ベトナムであり、韓国は45位、日本は137位である。もちろん、韓国の貿易依存度(輸出依存度)は、1997年のアジア通貨危機以降に起こったIMFショックを経て急上昇し、2008年のリーマンショック以降の数年は世界トップクラスとなっている。

が、2000年代以降に貿易依存度で韓国と同程度だった、あるいは現在もはるかに韓国を上回る国はたくさんあるにもかかわらず、近過去においても現在においても、それらの国の音楽輸出の度合いはK-POPには遠く及ばない。

また、「内需が小さいから海外進出する」という理屈では、世界第1位の内需を持つアメリカが世界最大のコンテンツ輸出国であることの説明がつかない。

韓国でもアメリカの音楽が広く聴かれ、アイドルたちがライブでカバーしたり、デビュー前の練習生たちがダンスの練習に使う曲の定番になっていることはK-POP好きには常識だろう。なぜ音楽市場が小さいはずの韓国に、世界第1位の内需を誇るアメリカの音楽があれほど流れ込んでいるのか?

こうした「事実」からわかるように、国単位で見たときの内需の大きさや輸出依存度の高さと、音楽輸出にどれだけ積極的かということとは、直接的には関係がない。

「K-POPは内需が小さいから外需を求めた。一方、J-POPは内需が大きいから内向きになっている」という理屈は、日韓2国間比較ではもっともらしく聞こえても、第3項を入れた途端に破綻するポンコツ理論なのだ。