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スマホで写真を撮っていたら、中国で捕まってしまった日本人の悲劇

禁固刑を食らうことも...

片道4時間で着く隣国だが、日本と異なる景色が広がる。軍事施設や観光地周辺では警官が監視している。思い出作りの旅行のはずが、国際問題に発展しかねない大事になっては目も当てられない。

泥酔させられ、尋問

2017年に訪問した日本人は268万人、人気の観光地のひとつが中国だ。これからのシーズン、子どもや孫が中国へ卒業旅行に出かけるという人も多いだろう。

だが、よくよく注意するよう言っておいたほうがいい。スマホを取り出し、街中や有名スポットで友人と記念写真をパシャリ、たったそれだけで「スパイ」扱いされてしまうことがある。

一度公安や警察に拘束されれば、身の安全の保証はない。ロクな弁明もできないまま、現地で裁判になり、禁固刑を食らうこともありえる。そうなれば、内定取り消しどころの騒ぎではない。

米露に次ぐ軍事国家となった中国では、公安や警官が街中いたる所に配備され、外国人の言動に目を光らせている。

どう見ても観光客の身なりだったとしても、写真を撮っている姿が「国家機密を収集している」と見なされれば、どこからともなく警官が現れ、容赦ない尋問にかけられる。

著書に『ルポ中国「潜入バイト」日記』がある、ジャーナリストの西谷格氏はみずからの拘束経験をこう語る。

「山東省のある精肉所で店員に質問をしていると、知らないうちに警察を呼ばれて、そのまま近くのホテルに連行されました。

ホテルの部屋まで屈強な男2人が同行し、その後、私は彼らにレストランに連れていかれ、強い酒を大量に飲まされました。『私たちは友人だ、友人なら注がれた酒を飲まなきゃいけない』と。私が酔ったところで、部屋に戻り尋問が始まりました。

最終的にスマホやパソコンのデータまでチェックされました。暴力こそありませんでしたが、『この頻繁にやり取りしている奴はだれなんだ』といった具合に、メールの内容についても逐一問い質されたのです」

泥酔させてから尋問をする、というのは中国当局の「マニュアル」だと思われる。西谷氏は拘束された翌日の夕方ごろ、「私は紳士的に扱われました。警察の対応には満足しています」といった文言が書かれた紙にサインさせられ、解放された。またその後、山東省からすぐに出ていくよう要求されたという。

「日本ではありえないような事態にさらされる可能性があるのが中国です。普通に旅行しているぶんには、突然拘束されることはめったにないでしょうが、想定外の危険があることを念頭に置いて行ったほうがいい」(西谷氏)

 

ノンフィクション作家の安田峰俊氏も、中国当局に拘束された経験がある。安田氏が語る。

「'15年、習近平のゆかりの地である陝西省を訪れたとき、中国の警察に拘束されました。習近平に関係する施設に入る際の身分チェックで目を付けられたんです。こういう地域に外国人が来るのは珍しいからでしょう。

むずかしいのは、中国のどこに入ってはいけないのか、なにを撮ってはいけないのかが観光客にはわからないところです。

たとえば中国の観光地には日本では考えられない数の警官がいます。興味本位でその警官たちを撮影していると、スパイの疑いをかけられる可能性は十分にあります」

スマホで写真を撮っただけで「国家機密の収集」だなんて大げさだと思うかもしれない。だが、中国の市街には国防に係わる施設が多くあり、それらが写真に写りこんでいれば「アウト」なのだ。

どういった場所の撮影に気をつければいいのか。まず、軍が使っている施設、警察署や市役所などの公共施設の撮影はご法度だ。

「軍」「管理」と漢字で書かれた区域や建物周辺では、スマホやカメラを取り出しただけで職員や軍人が駆け寄ってくる場合もある。近づかないのが無難だ。