# 中国経済

経済の悪化が止まらない…中国が「中所得国」へ逆戻りする可能性

これは米中貿易戦争のせいではない
安達 誠司 プロフィール

貿易額激減の「本丸」

さて、中国の貿易金額の激減はほぼ全地域で共通の現象である。

昨年12月の貿易統計でみれば、対日貿易では輸出が前年比1%減、輸入が11.4%減、EUがそれぞれ、0.3%減、2.7%減、台湾がそれぞれ、1.7%減、15.4%減、オーストラリアが同じく、5.2%減、3.4%減となっている。これはアセアン諸国向けもほぼ同様である。貿易減は対米だけの現象ではない(図表2)。

次に、この中国の貿易統計を品目別にみると(ただし昨年11月時点までの発表)、11月時点の品目別輸出で伸び率が大きく落ち込んでいるのは、通信機器(前年比0.5%の減少)、電機(同4.1%増)、輸送用機器(同2.2%増)、科学・専門機器(同8.6%減)、コンピューター等(同3.1%増)である。

また輸入金額では、食品(前年比5.8%)、原料品(同6.3%減)、動植物油(同9.8%減)に加え、機械・製造装置(同2.3%減)、通信機(同18.6%減)、電機(同5.7%減)、科学・専門機器(同2.2%減)の落ち込みが大きい。品目別輸出入統計は昨年11月時点だが、12月は同様の品目でさらなる悪化が見込まれる。

このように足元の中国の貿易統計をみる限り、米中貿易戦争の影響はせいぜい米国からの一次産品の輸入くらいである。最近の中国の貿易の急激な悪化の「本丸」は、中国の産業構造そのものの問題にあるように思える。

その代表格は通信機器である。

〔PHOTO〕gettyimages

通信機器については、先日の米アップル社の決算発表で中国国内でのiPhoneの売上急減の一方、中国メーカーの廉価品の売上増が報じられたが、例えば、日本から中国への半導体や製造装置、産業用機械や工作機械(金属加工機械や荷役機械など)の輸出や受注も激減しており(同じく、韓国、台湾、マレーシア等の中国への電子部品等の輸出も激減)、中国メーカーがアップル社との競争に勝利し、主力メーカーの座を奪ったというだけの現象とも思えない。また、もちろん、中国通信機メーカー製造の通信機器の他国への輸出が増加したわけでもない(逆にこれも激減している)。

すでに昨年12月までの統計がすでに発表済みの東アジア諸国の貿易統計の結果も考え合わせると、国をあげて米国から(先端)技術を吸収し、同時に(日本を含む)東アジア諸国を取り込むことによって、一大サプライチェーンを築き上げることで急速にキャッチアップしていった中国の「ハイテク産業」は、このような「必死な努力」ゆえに、技術が急速に陳腐化し、「コモディティ化」した上、現行の商品コンセプトとしては、需要がほぼ飽和したのではないだろうか。

そのため、中国が米国にほぼキャッチアップした段階で、もはや中国経済を牽引する力を失ってしまった可能性があると考える。

 

さらにいえば、世界的な景気減速懸念が台頭した2017年終盤に、中国がこれらのハイテク産業にからむ製品や製造用機械の輸出入を急激に拡大させたが、これが需要の先食いを起こしてしまい、その反動がタイミング悪く到来してしまった可能性もあると考える。

結局、ある産業が国全体の経済の成長に寄与していくためには、自ら開発した技術をオープンにしてお互い切磋琢磨してイノベーションを持続させ、生産性(経済学の用語でいえばTFP(Total Factor Productivity))の上昇に努めていかなければならないのではなかろうか。

その意味では、言葉は悪いが、もっぱら米国を中心として他国からの技術吸収による「パクリ」で国際競争に勝利したところで、その産業の「イノベーション力」が国全体の成長を寄与する力は大きく低下してしまうのではなかろうか。

これに関連して、中国では、AI等の「ソフトウェア」の技術開発が急速に進んでいるとの話がよく聞かれる。

ただ、中国国内で、この手の最先端技術が用いられるのは、中国共産党一党独裁体制を維持するための人民監視である(その代表格が、中国国民をスコアリングする動きだろう)。このような技術開発は、安全保障上の貢献はあるかもしれないが、経済成長を牽引することは難しいのではなかろうか。

もしこの筆者の「仮説」が正しいとすれば、何とも皮肉なことである。