空旅は私たちを変える(photo by iStock)

JALとANAの「熾烈な競争」が、私たちに恩恵をもたらす理由

未来の空旅はどう変わるか・その1

2018年、インバウンド旅行者の数は3000万人を超えた。今年はラグビーのワールドカップがあり、来年はいよいよ東京オリンピックだ。日本人も海外に向かう人がどんどん増えている。こうした移動を支える航空の役割は大きい。首都大学東京特任教授で交通政策が専門の戸崎肇氏が、航空の現況と今後の展望・課題について利用者目線から追っていく、連載第1回!

JAL・ANAの主戦場

JALとANAの競争が激しさを増している。その主戦場は国際線だ。

JAL・ANAにとって、国内線は成長の余地が少ない。

人口減少は地方において進んでいる。そのため、地方路線において収益性が見込める路線が少なくなっている。

東京―福岡、東京―沖縄とった基幹路線では、LCCがそのプレゼンスを高めている。振り返ると、2012年は「LCC元年」といわれた。この年、ピーチ、エアアジア・ジャパン、ジェットスター・ジャパンが運航を開始した。それ以来、LCCは市場に浸透し、日本でも多くの利用者を獲得してきた。

LCCに人は流れるか?(photo by Gettyimages)

ビジネスパーソンにとっては、マイレージを貯めるという誘因や、一定のマイルが貯まって高級会員になれば、特別待合室であるラウンジを使えることもあって、JAL・ANAを利用する人のほうが多いだろう。

しかし、日本ではLCCといえども、海外でのLCCとは違って、「おもてなし」精神があり、いわゆる日本らしいサービスを提供している。

それに、コスト管理に厳しい昨今のビジネス事情を考えれば、LCCの路線が拡大することはビジネスパーソンにとっても朗報だろう。そのぶん、JAL・ANAは苦戦を強いられることになる。

また、新幹線との競争もある。東北新幹線はますますスピードアップしている。北海道まで延伸も遂げた。2022年度には長崎新幹線も開業する。新幹線の競争力は強く、競合する路線では、航空会社もある程度の値下げは避けられない。もちろん、利用者にとっては願ったりかなったりである。

一方、航空会社にとって、国際線市場はまだまだ発展途上であり、魅力があふれている。アジアはこれからも急速な成長を遂げていくだろう。また航空技術の発展によって航空機の航続距離も伸び、これまでは飛べなかったような地域まで市場として射程圏内に入るようになってきた。

南米やアフリカに近い将来、直行便が飛ぶようになることも十分期待できよう。

このような長距離路線を運航することはLCCのビジネスモデルにはない。JALやANAはこれまでアライアンスの枠組みの中でこうした地域へ旅客を運んできたが、これからは自社の直行便をより多くの目的地に飛ばすことを考えられるようになる。

そうなれば、ビジネスパースンにとっては移動がより短時間かつ快適なものになり、さらに新たなビジネスチャンスが開ける。そして、旅行者にとっても移動手段の選択肢が広がる。つまり、観光産業にとっても市場がさらに拡大していくことにつながるのだ。

供給力の拡大は需要の増大につながる。そして、その需要は日本から海外に向かう人の需要だけにとどまらない。海外から日本を訪れる人の増大にもつながる。いわゆる「インバウンド」の拡大である。

LCCよりも優位に立てる

2018年の日本は、豪雨や地震などの大規模な自然災害に見舞われ、インバウンドの観光客も大きな被害を被った。その結果、一時的に訪日観光客の数は低下したものの、すぐに持ち直し、最終的には年間3000万人の大台を突破した。

これを急回復と見るか、あるいはそろそろ増勢に陰りが出てきたと見るのか、見方は分かれている。

さらに、文化の違いによる摩擦が様々な面において顕在化してきているが、総体的に見れば、インバウンドの増加によって、国内経済が後押しされていることは間違いない。

国別に見た場合、中国、韓国、台湾、香港と、近隣のアジア諸国からの訪日客が圧倒的な割合を占めている。そして、こうした誘客においてLCCが大きな役割を果たしてきた。その結果もたらされた需要の増加は、JAL・ANAにとっても大きな刺激をもたらしている。

爆買いはいつまで続くか(photo by Gettyimages)