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保育士の給料はなぜ安いのか…「ブラック保育園」が生まれる根本原因

田村智子・参議院議員インタビュー

保育士の人件費、その実態

保育士が不足するなか、国をあげての保育士の処遇改善が行われているが、本当に保育士の賃金は上がっているのだろうか。

保育所に支払われる運営費は「委託費」と呼ばれ、人件費が8割、事業費(保育材料や給食など)が1割、管理費(福利厚生や業務委託など)が1割で見積もられている。

しかし、保育士の人件費が想定通りにかけられず、薄給となる事態に陥っている。なぜなら、「委託費の弾力運用」という制度によって、人件費が他の目的に流用されることが可能になっているからだ。

いったい、人件費の実態はどうなっているのか。

 

保育所の人件費比率について、日本共産党の横浜市議団が先駆けて調査していた。

古谷靖彦市議を中心とした横浜市議団は2013年8月に記者発表を行い、市内の株式会社の人件費比率の低さについて問題視。

2010年度と11年度の決算では、株式会社の人件費比率が53.0%と53.2%、社会福祉法人は71.9%と70.7%で、株式会社立の保育所の人件費比率の低さが明らかになった。

その後、2017年2月に東京都は「保育士等キャリアアップ補助金の賃金改善実績報告等に係る集計結果」を発表。

都内の保育施設の月額賃金や人件費比率を詳報している。園長なども含む認可保育所の全体人件費比率を見ると、社会福祉法人は69.6%、株式会社は49.3%だった。

注:2015年度は東京都が調査に乗り出した初年度のもので、数値に誤りがあっても受領している。また、都は事業活動収入に占める保育従事職員の「給与支出」の割合を求めていたのだが、都側が財務諸表の項目に「人件費比率」と記載したため、筆者の調べた資料には定福利費を含めた人件費を記載した保育所も混在していた。現在は「事業活動収入に占める保育従事職員給与支出」の割合と改訂されている。

一方、全施設の一人当たりの月額賃金(賞与も含む)は、社会福祉法人で32万3919円、株式会社で26万833円となり、人件費比率と相関して賃金実額にも違いが出ていた。

委託費の弾力運用について疑問視している田村智子・参議院議員(日本共産党)に、保育制度の問題点を聞いた。

「今頃になって慌てて処遇改善しても間に合わない」と語る田村智子・参議院議員

保育者の人件費比率が2割…

小林:東京都は独自の処遇改善事業「キャリアアップ補助」を実施し、その要件に保育従事者の人件費比率の載った財務諸表の提出を求めています。個別にみていくと、保育者人件費比率が2割、3割というケースも少なくありません。この現状をどう捉えますか。

田村:保育者の人件費比率が2割台では、いったいどんな保育が行われているか心配になります。

年度途中に開園した場合など人件費比率が実際より過小に見えるケースもあるかと思いますが、それでも、たとえば保育者の人件費比率が4割を切るような場合は、実際の給与の実態を調べる必要があるのではないでしょうか。

小林:東京都に情報公開請求を行い、人件費比率の低い保育所の賃金実額を調べてみました。保育所ごとの常勤職員の一人当たり月額賃金(賞与などを含む総人件費で見たもの)が分かるので、それを12ヵ月分で計算すれば「年収」になります。

2015年度の東京23区の認可保育所のなかで保育者人件費比率が低い順から21ヵ所の株式会社立の認可保育所を見ていくと、約半数に当たる11ヵ所で、保育士の全国平均の年収315万円(2017年度実績、内閣府調査)を下回っていることが明らかになりました。

田村:保育士の賃金が総じて低いですね。その大きな原因となったのは、まず、公立の保育所が次々と民営化されたことにあります。公務員がバッシングされるなかで保育所の民営化が進んでしまいました。

公立であれば保育士も地方公務員として処遇が安定しますが、民間は10年もすれば賃金が高止まりする計算でしかない「公定価格」が人件費の基になるので、おのずと賃金水準が下がってしまいます。

そして以前は私立の保育士も公立と同じ水準の賃金が必要だからと、各自治体で「公私間格差是正」の取り組みが行われていましたが、今はそれも少なくなりました。

そして国が推し進めた株式会社の参入と委託費の弾力運用によって、保育士全体の賃金水準を押し下げてしまったと言えます。ビジネスチャンスだとして保育事業に参入した事業者に、人件費比率が低い状態のまま運営することを許してしまった。

国の施策がもたらした悪しき現象です。結局、それが原因となって保育士不足になっています。

長いスパンでみると国や自治体こそが保育士が安い賃金で働くことを当然としてきたのではないでしょうか。今頃になって慌てて処遇改善しても間に合わないのです。