中国・少数民族の少女が書いた「作文」が引き起こした悲劇的結末

1億人超を苛む絶対貧困国家の姿
北村 豊 プロフィール

繁栄の国の絶対貧困

ところで、2018年9月3日に中国政府国家統計局が発表した貧困人口に関する数字は次の通りであった。

1)中国の農村貧困人口は、1978年に7.7億人だったものが、2017年末には3046万人となり、過去40年間に7.4億人も減少した。年平均の貧困人口減少規模は1900万人に近く、貧困発生率も97.5%から3.1%に減少した。
2)過去5年を見ると、中国の農村貧困人口は2012年末の9899万人から2017年末の3046万人となり、累計で6853万人が減少し、貧困人口は70%近く減少した。また、貧困発生率は2012年末の10.2%から2017年末の3.1%に下降し、年平均の貧困脱出人口は1370万人であった。
3)世界銀行が発表する国際貧困ラインは2015年10月から1日当たり1.9ドル未満となっているが、この国際貧困ラインに従えば、1981年に8.78億人から2013年末には2511万人となり、累計で8.53億人減少した。

中国政府は2017年における中国の農村貧困基準を2010年に決めた1人当たり毎年2300元(約3.7万円)としているので、これを1日当たりにすると6.3元(約103円)にしかならず、米ドルに換算すれば0.95ドルにも満たない。

世界銀行の国際貧困ラインである1.9ドル未満で中国の貧困人口を集計すれば、恐らくその数は1億~1.5億人に達するのではなかろうか。

 

確かに過去40年間に中国の貧困人口は減少したかもしれないが、中国政府の発表とは裏腹に、2019年2月の時点でも中国の貧困人口は依然として1億~1.5億人を数えると筆者は考えている。

その1億~1.5億人の中には相当数の貧しい少数民族が含まれている。そこには上述した彝族だけでなく、中国政府から弾圧を受けている新疆ウイグル自治区のウイグル族およびチベット自治区やその周辺に居住するチベット族なども含まれている。

2018年12月31日付の日刊紙「中国紀検監察報」は、2017年10月に開催された中国共産党第19回全国代表大会から2018年11月までの14ヵ月間に全国で“扶貧(貧困救済)”領域で腐敗や業務態度に関し取締りを受けた問題が13.3万件に上り、18万人もの役人が処罰されたと報じた。

全国の地方役人にとって中央政府から配分される貧困救済資金は彼らの懐を肥やす貴重な財源なのである。ウクウイムが書いた作文の題名は「涙」だったが、最終的に貧困家庭へ支給される救済金は「雀の涙」なのが実情である。

中国は2020年までに人間として最低限の生存維持が困難な「絶対貧困」を除去することを目標に掲げているが、それは到底困難なのではなかろうか。第2、第3のウクウイムは今なお、次々と新たに出現しているのである。