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日本のバレンタインは、いつから「チョコをあげる日」になったのか

1960年代「呪術」として始まった

1960年代、それは「呪術」だった

かつてバレンタインデーは「告白の日」であった。

いまはたぶんに「チョコレートの日」となっている。お菓子の日と言ってもいいかもしれない。

まだ少し愛の日という雰囲気は残っているが、クリスマスほどの強制力はない。
 
女の子が好きな男の子にチョコレートを贈って告白する、という日本式バレンタインデーの歴史は、そんなにすごく古いわけではない。

だいたい1960年代に蠢き始め、1970年代に一般化していった。

現場にいたからすごく知っている。社会がじわじわ熱くなっていく空気を覚えているし、またあとになって「小中学時代のバレンタインデーをどう過ごしていたか」を何人もに問い詰めたので(取材しただけですが)よくよく知っている。

このイベントを始めたのは、1960年代の少女たちである。

世代でいえば、だいたい「昭和30年代(1955-1964)」生まれの少女たちになる。始めたのが前半(1955−1959年)生まれで、静かに広めていったのが後半(1960-1964年)生まれだろう。

 

彼女たちが十代のころ、静かに始まっていた。

バレンタインデーの歴史については、古く3世紀の殉教者の話(男女のあいだを取り持って殉教)が取り沙汰されていることが多いが、まあ、あまりあてになる話ではない。“卑弥呼の恋のさや当て話”くらいにあてにならない。卑弥呼のほうが少し年上だが、聖ヴァランタン(バレンタイン)はだいたい同じ時代の人である(複数人の伝承があるのでどのヴァランタンの話だ、という問題もある)。

また1960年ころ、メリーチョコや森永製菓が「バレンタインデーにチョコレートを」との広告を打ったのが端緒であるとも言われている(メリーチョコが1958年、森永製菓が1960年)。たしかに「バレンタインデーにチョコレート」というひとつの提案にはなったとはおもわれるうが、これは下地にすぎない。チョコレート会社の広告によっていきなり始まったわけではない。

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実際にチョコをあげる動きに出たのは、日本中の少女たちである。おそらく都市部に多かったとおもうが、地方にもいただろう。「おませな」少女たちだ。

1960年代の少女たちが、おまじないにように(というか、おまじないの一環として)2月14日にチョコをあげると恋が叶う、という呪術的なイベントを始めたのだ。

呪術的イベントなので、最初は人知れず始められていた。日本式「チョコあげる」バレンタインデーの始まりが特定しにくいのは、そのイベントの秘匿性にある。