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「部長の役をやらせたら日本一」の俳優・吹越満はこうして生まれた

どんな役でも笑わせてくれる

メガネ姿がよく映える青白い顔。髪を後ろになでつけて、いかにも「中間管理職」という雰囲気をにじませる。独特の存在感とユーモアで主演をぐっと引き立てるこの名優は、いかにして生まれたのか。

見るたびに「違う人」

新春に放送された『釣りバカ日誌 新米社員浜崎伝助』のスペシャル版(テレビ東京系)。言わずと知れた国民的人気漫画のドラマ化作品だが、この物語中で、ひときわお茶の間の笑いを誘う演技を見せた役者がいる。

主人公・浜崎伝助の上司、佐々木課長役を演じた吹越満(53歳)だ。

自身はスーツをぴしっと着込んでいたって真面目なのに、軽いノリで難題を押し付ける上司と自由気ままな部下との間で板ばさみになって右往左往。挙げ句に、泥酔した果てに足を滑らせて階段の上から下まで滑り落ち、全身包帯だらけの満身創痍に―。かつて、映画版で故・谷啓が演じたコミカルな役どころに、また新たな表情をくわえることに成功した。

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「わざとらしく、いかにも『笑わせてくれる』って感じではないのに、大真面目にやればやるほど見ている側はついクスッと笑ってしまう。これぞ『吹越流』という感じでした」(コラムニストのペリー荻野氏)

この『釣りバカ日誌』以外にも、年末から年始にかけて吹越はテレビ画面に出ずっぱりだった。

『家康、江戸を建てる』(NHK)、『忘却のサチコ』(テレビ東京系)、舞台『ニンゲン御破産』(WOWOW)、連続ドラマ『トレース』第1話(フジテレビ系)、『アンナチュラル』(TBS系、再放送)……。この他に、ナレーションを担当している番組も複数放送された。

「たまたまオンエアが重なっただけですよ。『釣りバカ』に至っては昨年4月に撮り終えていました。そもそも、スケジュールが許す限り、基本的にどんな内容であれ『なんでもやります』というスタンスで仕事を受けていますから」

 

吹越本人は、伏し目がちにこう謙遜してみせるが、これほどひっきりなしにオファーが舞い込むのは、その卓越した演技が高く評価されているからに他ならない。

普段は辛口で鳴らすテレビコラムニスト、今井舞氏も、吹越の芸達者ぶりに称賛を惜しまない。

「いい意味で『個性』のない役者ですよね。何をやっても同じ役に見えてしまう俳優が多いなか、吹越満の場合は見かけるたびに『違う人間』になっている。脇役の場合、キャリアが長くなるに連れて、善人役なら善人役、悪役なら悪役と、求められる芝居のオーダーが偏ってくるものなのに、彼は何にでもなれてしまう。クセがなくて、まるで白飯のように何にでも合う。貴重な存在です」

これまで、200近い役柄を演じてきた吹越だが、最近は課長や部長といったいわゆる「中間管理職」の役柄が多く目につく。先述の『釣りバカ日誌』然り、部下に翻弄される編集長役を演じる『忘却のサチコ』然り、上司と部下の間に挟まれる微妙な立場からくるおかしさを絶妙に表現し、思わずふっと笑ってしまうような演技を見せる。

いま、中間管理職の役をやらせたら、日本で一番の役者だろう。