積水ハウスの地面師事件、警察内部で「内通者説」が囁かれ始めたワケ

入手した調査報告書に書かれていたこと
藤岡 雅 プロフィール

いつもの稟議とは違った

これだけの疑惑の多い相手との取引をめぐって、当時の決裁権者であった積水ハウスの幹部たちはどう判断・決断を下していったのだろうか。その詳細についても調査報告書は記している。

具体的に見ていくと、不動産稟議は原則、〈東京マンション事業部で起案され、マンション事業本部の意見を付し、不動産部で受け付けの上、関係先(法務部等)及び回議者の審査を受けて、社長決裁を得るもの〉とされているが、〈この件については、回議者の審査の前に、社長の決裁を得る「事後回付」の手続きが取られている〉

契約が交わされたのは4月24日だが、その6日前の18日に当時社長だった阿部俊則氏(現会長)が現地を視察。その日に東京マンション事業部が稟議書を起案する。〈不動産部の受付が19日、社長決裁が20日〉だった。

前述の中間売買当事者の「(株)IKUTA」から「IKUTA(株)」への変更は、社長決裁日の前日の4月19日。しかも〈稟議書上では、鉛筆書きで修正〉されただけだったが、社長決裁時、阿部氏からはこのことも含め〈明確な質問はなかった〉という。

 

当初からのこの案件は社長だった阿部氏の〝肝いり″として進行したことが指摘されてきたが、あまりにリスクを軽視し過ぎている。なぜ積水ハウスはそこまで取引を急いで進めていったのか――。冒頭に紹介した警察幹部はこうした状況をつぶさに把握している模様だ。

積水ハウスは一連の経緯を質した筆者の取材に対して、「回答は差し控えさせていただきます」と答えるにとどめた。

また、調査報告書については、「社内調査を目的として作成されたもの」であることを理由に、依然として公開を拒んでいる。

過去最大級の前代未聞の地面師事件。その全容解明に向けた取り組みは、まだ始まったばかりだ。