積水ハウスの地面師事件、警察内部で「内通者説」が囁かれ始めたワケ

入手した調査報告書に書かれていたこと
藤岡 雅 プロフィール

誕生日を間違えていた「偽の所有者」

それだけではない。

積水ハウスでは真の所有者を名乗る人物からの内容証明が送られてきたことから、念のため、取引相手の本人確認の徹底が話し合われた。積水ハウスの顧問弁護士に相談したところ、〈①知人による確認、②消印付郵便物、③納税証明書、公共料金納付書、④健康保険証、⑤年金手帳、⑥預金通帳等で、可能な限り多くのことを確認すること〉との指摘までもらっていたにもかかわらず、積水ハウスの担当者たちは、偽の所有者に4通の内容証明郵便を見せたうえで、確約書を書かせるだけで済ませているのだ。

調査報告書は、この対応をまた次のように批判する。

〈リスク情報を得てから、再度本人確認を行うに当たって、知人による本人確認を行わず、『確約書』の入手で済ましている。確約書は、『自分は内容証明郵便を出したことはないこと』、『自分以外に本件不動産の所有者は存在しないこと』の2点を確約保証するというものであり、結局は、詐欺犯に詐欺をしていないと確約させるもので、何の意味もない書面である〉

その後も偽の所有者は一度も現地に姿を現さず、本人確認証明を作成する際にも〈自分の誕生日、干支を間違える〉ということも起こしているが、積水ハウスの担当者たちは疑いを持って偽の所有者に対峙することなく、残金の支払いに突き進んでいったのである。

〔photo〕iStock

警察官の任意同行

そもそもこの取引は、最初から不可解なことの連続だった。

たとえば4月24日に交わされた契約のための稟議手続きの途中に、偽の所有者との取引を仲介した中間業者が「(株)IKUTA HOLDINGS」から「IKUTA HOLDINGS(株)」と前株の会社から、後株の会社に変更されているのだが、なぜか積水ハウス側はこれを安易に受け流している。調査報告書は次のように指摘する。

〈当初の中間業者の(株)イクタホールディングスからイクタホールディングス(株)というペーパーカンパニーに変更され、代表者も女性に変わっている。これに強い疑念を持つべきであった〉〈この会社は事件後に繋がりを消すためのペーパーカンパニーであり、このような会社は、絶対に、当社の取引先であってはならない〉

また、残代金の決済日の6月1日にも理解しがたい行動がとられている。

 

当日、東京マンション事業部の会議室では、当初から交渉を続けていた東京マンション事業部次長や偽の所有者や中間業者などのメンバーが会していたが、そのとき五反田の不動産の現地に待機していたスタッフが、真の所有者によって通報されて駆け付けた警察官に任意同行を求められた。

ところが、〈契約行為はそのまま続行された〉。こうした拙速な行為を調査報告書はこう指弾している。

〈単なる売買行為の妨害のために、警察が出動することは考えられない。従って、取引を中断し、売主・中間業者が会議室に揃っているので、土地所有者を警察または現地への同行を求めるべきである〉