積水ハウスの地面師事件、警察内部で「内通者説」が囁かれ始めたワケ

入手した調査報告書に書かれていたこと
藤岡 雅 プロフィール

不可解な「預金小切手」

筆者がまず注目した不可解な点は、代金の支払いに「預金小切手」が使われていたことである。

そもそも今回の取引は、2017年4月24日に偽の所有者と中間業者の「IKUTA HOLDINGS」、そして積水ハウスの間で、売買契約が交わされたことに端を発する。同日に手付金14億円が支払われたうえ、仮登記を実施。残代金の49億円が支払われたのが6月1日で、その後、6月9日に法務局より本登記申請の却下が通知されたことで所有者と名乗る女性が偽物と発覚し、積水ハウスの地面師詐欺被害が明らかとなった。

調査報告書によれば、この代金を支払う際に積水ハウスは、預金小切手を使ったというのである。実際、報告書は〈複数に分割した預金小切手49億円を中間業者に渡し、当社の目の前で中間業者から偽所有者にその小切手の大部分が渡された〉と指摘しているが、この規模の取引として預金小切手での支払いは「通常ではあり得ない」(業界関係者)という。

本来ならば銀行口座の振り込みが一般的であるのは、預金小切手にすると換金が容易で引き出しなどの記録が残らないのでマネーロンダリングに利用されやすくなるリスクが出てくるからである。

それにもかかわらず、今回は預金小切手を使用したのみならず、複数枚に分割して支払っていることから、これが犯人たちの換金をむしろ容易にしてしまった可能性があるのだ。

なぜ地面師グループに都合のいい支払方法が許されたのか…その取引経緯に異様さを感じるのである。

 

調査報告書が「非常識」と断言

次に不可解なのは、「所有者確認のあまりの杜撰さ」である。

調査報告書によれば、契約と仮登記手続きが完了して以降の5月10~23日までの間に、真の所有者からの内容証明が計4通も届けられている。その内容は「仮登記がなされ驚いている」「仮登記を抹消せよ」といったもので、つまりは真の所有者は自分であり、積水ハウスが行っている取引は偽物によるものであると警告するものであった。ちなみに、5月10日付の内容証明郵便には本人の印鑑登録証のカード番号まで記されていたという。

ところが積水ハウスの担当者たちは、この内容証明は取引の妨害であり、嫌がらせであると判断したという。しかも、その理由として、〈本人は面会謝絶〉でありながら〈代理人名の書状ではない〉ことなどをあげたうえで、幾つかの矛盾点があるとして、怪文書の類と評価したというのである。

一般の大企業であれば、現在進行形の取引について内容証明が送られてくれば、もう少しまともに対応するものではないか。実際、調査報告書は当時の積水ハウス側の判断にこう疑問を投げかけている。

〈内容証明郵便は、訴訟の際の証拠等として採用されるものであり、4通もの内容証明郵便を取引妨害とみなすことは非常識である。本人と偽って内容証明郵便を取引先に送りつけるような行為は、内容によっては犯罪になりかねないことである〉