「統計不正」参考人招致での情けない追及にこの国の野党の限界を見た

不勉強にもほどがある…
髙橋 洋一 プロフィール

事実上不可能

予算面で実害が出たのもさることながら、今回の統計不正により、国家の根幹となる統計数字への国民の信頼が大きく揺らいでいる。筆者のように、データに基づく分析を行う者にとっては、とてもショッキングな出来事だ。この点では、実害は確かにある。

統計技術面からみれば、①は全数調査から一部抽出調査に変更するのは、きちんとした手続きをとり、誤差率評価などを行えば、正当化される可能性があるので、手続き面のミスである。

②については、統計処理としてはちょっと信じがたい。①の手続き面をしっかりやらなかったので、あたかも全数調査をしているように見せかけたのだろう。2018年からは、一部抽出調査を3倍する補正で全数調査したような整合性をとっている。①できちんとした手続きをとり、②で3倍補正していればよかったのだが。

 

2004~2017年については、東京都で0.1万件のサンプルをとっていなかった。全国200万事業所を対象とし、3万件程度のサンプル調査であるはずなのに、2.9万件程度のサンプル調査になっていた。これを2.9万で割り算すべきところ、3万で割り算したため、過小の数字になった…というのと同じだ。それが是正されると、数字としては大きくなるだけだ。

これが、統計不正の概要だ。

ところが、その統計不正とは別の話も出ており、それが報道を混乱させている。そのひとつが、2018年1月から行われた、調査対象となるサンプルの入れ替えと労働者ウエイトの更新である。

これは、統計不正とは関係のない、統計手法において必須となる、技術的な見直しである。

サンプルの入れ替えについてはたびたび報道されているが、労働者ウエイトの更新はあまりに技術的な問題なので、あまり報道されていない。その一方で、この技術的な見直しが統計不正と混同され、これも「アベノミクス偽装」としている報道もあるが、まったくお門違いである。

この技術的な変更によって、2018年からの賃金統計がやや高めにでることは事実であるが、その多くは労働者ウエイトの更新の寄与であり、一部報道での「サンプルの入れ替え」によるものではない。

ハッキリ言って、サンプルの変更によって統計上の数字を高めにするのは至難の業であり、そうした細工をすることは事実上不可能である。

一方、賃金水準が低い労働者数のシェアが低下し、賃金水準が高い労働者のシェアが増加しているので、全体の賃金水準の押上げに寄与しているのは、アベノミクスの成果であり、それを適切に反映することは、なにも問題がない。

なお、サンプルの入れ替えによる影響を除くために、入れ替えの前後で共通事業所での継続標本による賃金指数も参考値として公表してきた。賃金水準に関心がある人は通常の公表値を、賃金伸び率に関心がある人は参考値を、という使い分けがなされてきた。

以上のことを予備知識として、8日の衆院予算委員会の参考人招致を見てみよう。