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IT先進国フィンランドの奇策「1パーセントAI計画」をご存知か

こんな潔い国家戦略があるなんて

北欧の小国がとるAI戦略とは

北欧のIT先進国として知られるフィンランド。今、この国でAI(人工知能)を国是として掲げるユニークなプロジェクトが進行している。

https://www.politico.eu/article/finland-one-percent-ai-artificial-intelligence-courses-learning-training/

通称「1パーセントAI計画(1 percent AI scheme)」と呼ばれる同プロジェクトでは当初、フィンランド総人口の約1パーセントに当たる5万5000人に、大学等を通じてAIの基礎教育を無料で提供する。さらに、その後、数年をかけて、徐々にその対象者数を増やしていこうとしている。

たとえば冒頭の記事で紹介されているのは、これまでAI技術には縁も所縁もなかった歯科医の女性が、同プログラムを通じて「機械学習」や「ニューラルネット」など先端AIの基本概念や、それを構築するためのプログラミング・スキルを学ぶ、といったケース。

これらを学び終えた今、彼女はそこで取得したAI関連の知識や技能を今後、自らの本業、つまり歯科医療に応用していくことを考えているという。

フィンランド政府は今後、この「1パーセントAI計画」を漸次拡大していくことで、将来的には同国の労働者全員が先端AIに通じた、いわば「AIネイティブ」になることを期待している。

「開発」ではなく「応用」のリーダーに

ここに見られるように、フィンランドの「1パーセントAI計画」は新たにAIの技術者や専門家を育成したり、AI技術の新規開発を進めるためのプロジェクトではない。むしろフィンランドの労働者全員がAIの基礎知識や技能を育み、それを自らの本業に役立てることで同国の産業全体の底上げや進化を促すことを狙っている。

つまり「AI計画」とは言っても、目指すのはAIの技術開発ではなく、徹底的にアプリケーション志向のプロジェクトなのだ。

このような計画(方針)を選択した理由について、フィンランドのMika Lintila経済相は次のように語っている:

「我々(フィンランド)には、AI開発の分野で(世界的な)リーダーになれるほど十分なお金(や人的資源)がない。しかしAIを(産業各界で)応用するとなると、話は違ってくる」

 

この発言は具体的に何を意味するのか?

現在、世界のAI開発をリードしているのは米国と中国だが、彼ら大国には、先端AIを開発するための潤沢な資金や(膨大な人口をベースとする)多数の優れた研究者など人的資源がある。しかし人口500万人余りの小国フィンランドには、それらは望むべくもない。

そうであるなら、AI開発で米中と競争することは最初から諦め、むしろ彼ら大国が開発してくれたAIの先端技術を自国の産業へと応用することに注力すべきではないか。

つまりAIの開発大国ではなく、AIの応用大国を目指す――これがフィンランドの選んだ道なのだ。ある意味で非常に潔い、ほとんど開き直りに近い国家戦略と見ることもできる。