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# 日本経済

厚労省の不正統計問題、「実質賃金」よりも注目すべきポイント

「消費税率引き上げ」こそが本丸だ

毎月勤労統計の存在意義

厚労省の不正統計問題をうけて、「実質賃金」の話が国会でも話題になっている。今回はこの話を取り上げてみたい。

今回話題になっている「実質賃金」だが、厚生労働省が発表している「毎月勤労統計(以下、「毎勤統計」という)」における「名目賃金指数」を消費者物価指数(正確にいえば「持家の帰属家賃を除く消費者物価指数」)で除して算出したものである。

「名目賃金指数」は、従業員数が5人以上の事業規模の企業を対象に調査した「現金給与総額」を、2015年平均を100として指数化したものである。名目賃金指数を消費者物価で除することによって、物価変動分を除去した賃金を測ることを目的としている。

ただし、問題になっているのは、実質賃金そのものではなく、名目賃金の方である。つまり、今回の不正統計問題は、本来であれば、事業規模500人以上の企業は、全企業が調査対象(調査票を配布して記入し提出してもらう)になるはずだが、東京都では、その中の3分の1を抜き出し、サンプル調査で置き換えていたことである。

さらには、サンプル調査を全数調査に換算し直す「換算率」を誤ったために統計自体の信憑性が怪しくなったということである。

なお、厚労省のこの不正統計は2004年頃から行われてきたということだが、困ったことに、全てを遡及して訂正するのは難しいとされており、毎勤統計自体の存在意義が疑われる状況となっている。

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確かに、官公庁がこのような不正を行うことは由々しき事態ではある。ただ、30年近くエコノミスト業務をやっている筆者の経験からいえば、周辺の諸先輩方を含め、多くの同業者の中で、毎勤統計を重要視する方はそれほど多くなかったように思う。したがって、これまでの毎勤統計の不正によって日本経済の見方が大きく歪んだものになったということはない。

繰り返すが、だからといって、この問題をスルーしてもよいということではない。この問題の背景には、統計整備事業に対する予算の削減があったように聞いている。コスト削減のために全数調査からサンプル調査に変えたということだろう。

 

世の中的には、「ビッグデータ」を用いた統計解析の有用性が指摘されており、個々の経済主体に関する膨大かつ精緻なデータを収集する流れになりつつある中、この手の不正統計問題は時代の流れに逆行しているようで世界的にはみっともないことである。

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