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30代で医学部に入った、とある私大文系卒サラリーマンの夢

これから医者になるのも不可能じゃない

「大人の受験生」

大学受験シーズンに入った。今年も、医学部への志望者は多い様子だ。

しかし、医学部を目指しているのは、高校生などの若者だけではない。他の学部や専門学校に進んだ人、別の分野に就職をした人、すでにビジネスや教育といった分野で活躍している中堅のサラリーマンなど、「大人の受験生」(再受験生と呼ばれる)も、一定の割合でいる。

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おおよそ10人に1人くらいの割合で、再受験生が存在しているようだ。(<社会に出てから医学部に入る「再受験生」が増えているワケ>参照)

他分野に進んだ人が、進路を変更して「医師」になろうとする場合、原則として医学部を受験する以外の選択肢はない。医師になるためのルートは、法律家(司法試験)や公認会計士といった、他のエリート資格とは異なり、「医学部(6年制)」卒業が条件となるからだ。

上記のような、医学部を目指す、大人の受験生=再受験生のリアルな姿に迫ってみたい。

「実は、若い頃は医者になりたかった」、「大人になってから、医師になりたいと思ったことがある」、等々、実は内心で、「医師」という魅力的な仕事に就きたかった(就きたい)人は、読者の方々の中にもいるのではないか。

ただし、お金や時間、学力や機会があれば、という条件付きで、というのが常識的な判断だろう。大人になってから、実際に、本気で医師を目指そうとするには、相当な覚悟が必要だ。

しかし、医学部受験や医師というキャリアの仕組み、きちんとした受験勉強のノウハウ、そしてお金の問題などがクリアになれば、30歳代からの医学部合格も夢ではない。いわんや、20歳代からのチャレンジなら、問題はお金と学力だけだ。

 

文系私大卒、リーマンから医師になったAさんの話

私の教え子のAさんは、東京にある偏差値62程度の私立大学(文系)を卒業後、一部上場企業で営業をしていた。

だが、赴任先の宮城で東日本大震災を経験し、医療職の重要性と尊さに気付き、医師を目指すことを決意。20代後半から受験勉強を始め、30歳で関西の私立医学部に合格。

受験回数は3回(3年)。数学と理科系科目未履修からのスタートだったため、受験を思い立ってから2年半が経っていた。予備校の学費や受験費用は、サラリーマン時代の預貯金でまかなった。受験最後の年は、予備校には通わず、実家で復習と受験校対策中心の勉強を行ない、学費を節約。合格までの学費・生活等の経費は400万円程度。

合格した医学部は私立大学だったため、6年間で3000万円も必要となったが、実家から通える医大に入学し、生活費を極力抑えることにした。

入学金と初年度の学費は、銀行から借り入れた学資ローンと親(Aさんの実家は一般家庭で、お金持ちなわけではない)からの借金で対応した。

2年目以降も、学生支援機構の公的奨学金と、医学生のための地方自治体の奨学金を組み合わせ、親の援助も受けながら、無事6年間で卒業し、国家試験に合格。初期研修が終わり、地元の病院で本格的な医師生活を送り始めている。

Aさんは、現在、救急医療に携わっており、とてつもなく忙しい日々を送っている。しかし、疲れや忙しさというマイナス面を、仕事のやりがいが、大きく上回っていると、力強い言葉で答えてくれた。

今までで苦しかったことは?という質問には、「2年連続で医学部に落ち、この何の所属先もない、何の保証もない状態がいつまで続くのかという不安に抗うのが、一番つらかった」と答える。

ただ、「学力が少しづつ向上しているという実感と、勉強それ自体への興味関心も、日に日に高まっていったため、勉強に没頭することで、不安感を払拭させることが出来た」とも述べている。

そして、「少ないながらも、同じ境遇の仲間がいた事は、落ち込んだときの精神安定剤になっていました」とのこと。

再受験生のコミュニティは、河合塾KALSなど、予備校にそれぞれ存在しているという。やはり、受験という競争においても、持つべきものは、仲間だということであろうか。