米ニューヨークで展示販売されていたケイチョウサウルスの化石 Photo by Ryan Somma / Flickr

海の古生物の代表選手が「怪しい化石の代名詞」に転落した哀しい話

恐竜大陸をゆく ケイチョウサウルス編
巨大スケールで中国の恐竜事情を追う大好評連載、今回のテーマは中生代の海の王者「首長竜」……ではなく、その遠い縁戚である「偽龍類」
なかでも30センチくらいの、復元図を見るとかわいらしい人気古生物が登場します。ただしエピソードは残念な話で──。

中国一の「マイナー省」を代表する古生物

広大な国土を誇る中国には、海棲爬虫類の化石がやたらに出土する地域がある。それは西南部の山岳地帯・貴州省だ。

多数の少数民族が暮らす山がちかつ温暖湿潤な気候の土地柄で、棚田を作ったり歌垣の習慣を持つ少数民族もいることから、過去には日本人の文化的なルーツがあるのではないかと言われたこともある(ただしこの説に学術的な裏付けは薄い)。

貴州省貴州省の棚田 Photo by iStock

ただ、貴州省はこれといった目立つ産業もなく、中国全土の各省のなかでも影が薄いマイナー省だ(中国人と国内各省を挙げる山手線ゲームをやると、最後まで名前が出てこないことも多い)。

とはいえ遠く三畳紀の時代は、さまざまな生物が生息する海洋地帯だったようなのである。

そこで今回スポットを当ててみたいのが、中国の海棲爬虫類化石のなかでも古くに発見されたケイチョウサウルス(Keichousaurus)だ。漢語名は「貴州龍」で、文字通り貴州省を代表する古生物として知られている。

これは偽竜類と呼ばれ、ノトサウルスなどが属する初期の海棲爬虫類の仲間である。

黔西南プイ族ミャオ族自治州ケイチョウサウルスの化石が出土する黔西南プイ族ミャオ族自治州。ベトナムやラオスに近い山奥だ。『百度地図』より

偽龍類は三畳紀に繁栄したものの、三畳紀―ジュラ紀間の絶滅イベントを乗り越えられず絶滅してしまったのだが、彼らの初期の仲間から首長竜の仲間たちが進化していったと考えられている(なお、念のために確認すれば、偽竜類をはじめ魚竜や首長竜、モササウルスの仲間などは「恐竜」ではなく、類縁関係も比較的遠い。彼らは中生代の海を支配した大小さまざまの海棲爬虫類たちである)。

ケイチョウサウルスは、不名誉なエピソード(後述)も多い、いわくつきの生物でもある。しかし「中国の恐竜(中生代の古生物)」の四方山話をテーマにする本連載としては、むしろこれらの怪しい話も興味深い。詳しく見ていくことにしよう。