# LGBT

「LGBTは家も借りられない」はどこまで本当か…当事者のリアル

変わらないこと、変わり始めたこと
永易 至文 プロフィール

しかし、事情を率直に話しても、今度は不動産屋さんの窓口で不快な思いはしないのでしょうか。当事者にはそんな悩みがつきまとうのですが…。

「うちはお客さんに失礼な対応はないと思っています。つねづねうちの社員には、お客さんにはいろんなかたがおられ、他の不動産屋さんで断られたかたもいらっしゃる。われわれは口幅ったいですが社会貢献性ももった仕事である。断られたかたにも住まいを見つけるのが君たちの仕事だ、物件がないと言うな、と指導しています」

こちらの常務さんを紹介してくれたのは、アパート経営をしていてこの会社と付き合いのある友人のゲイでした。

また、常務さんが仲間と会社を立ち上げたころ、まだお客さんが少ないので、水商売のかたOKの物件を開拓し、歌舞伎町のお姐さんたちに営業し、あるマンションはほとんど水商売の寮みたいになっていたこともあったとか。多様なお客さんとその背景に接してきた歴史あっての発言と受け止めました。

「高齢独居」という次の問題

性的マイノリティと不動産の問題は、同性カップルや、書類の性別と見た目が合わない人だけではありません。性的マイノリティは婚姻制度の外で短期的な出会いと別れを繰り返し、最終的に「おひとりさま」で高齢期を迎える人が多い印象もあり、昨今の「高齢独居」をめぐる賃貸困難も気になるところです。

オーナー側も高齢化して、「一人死されて苦労して片付けるくらいなら、空き家にしておいたほうがいい」と考える人もおり、ここにも賃貸のミスマッチがあるようです。

さきほどの常務さんはこう語ります。

「高齢独居はまさに社会問題ですね。私どものオーナーさんたちに高齢独居のかたが増えている現実をご説明し、これからはこういうかたの入居にも理解をもたないとダメだし、それがオーナーさんの責務でもありますよ、と一軒一軒説明しています」

「じつは、うちはいくつかの区と生活保護の人の住宅探し窓口の提携を結んでいます。オーナーは最初、先入見から生保の人の入居に抵抗がありましたが、実際、入居してもらってもなんの問題もなく、理解が進みました。それとおなじことを、いま高齢者対策として取り組んでいます」

高齢者の一人死による「事故物件」化は、オーナーたちの脅威になっているようです。告知や賃料値下げについても、現状は各社まかせ。

「そもそも事故物件とか孤独死といっても、どんな亡くなり方をしたのか……病死か事故死か、他殺か自死か、どれぐらいたって発見されたか、どういう場合に告知義務があるのかなど、定義や行政のガイドラインもなく、各会社やオーナーの判断です。ただ、事故があったのに告知をしなかったらペナルティー、つまり借り手から瑕疵担保責任を問われることになります」

性的マイノリティの場合、親族と不和・疎遠のかたもおり、そうでなくてもきょうだいは自分と同様に高齢、その子(おい・めい)とは連絡もない。そうなると保証人や緊急連絡先の用意はもちろん、定期的な見守り、単身で認知症になったとき、そして一人死の発見、死後の片付けなど、さまざまなサポートが必要となります。

これらはLGBTのためというより、セクシュアリティにかかわらず、社会をだれもが住みよいものにするための視点ではないでしょうか。

 

公営住宅、民間住宅、新しい動きが胎動

住宅賃貸をめぐる問題は、LGBT固有の課題というよりも、社会でのミスマッチの部分が大きい部分があるようです。

とはいえ、同性ふたりや見かけと書類上の性別に違いがある人など、まだまだ社会の認知が足りないため家を借りにくい人がいるのも事実で、行政も業界も改善に取り組んでほしいものです。

いま、自治体で広がる「同性パートナー制度」は、それを提示したからといってオーナー・不動産屋さんが物件を貸す義務が生じるわけではありませんが、男性二人だとときに不安がられるところを、現場では「ああ、男女でいえば(入籍しない)事実婚ですね」と理解が早まるでしょう。また、導入した自治体に区営・市営などの公営住宅があれば、まず隗より始めよ、同性カップルの申込みを受け付けるようになってきました。