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知られざる「保育格差」…なぜ保育士の賃金は上がらないのか

大西健介・衆議院議員インタビュー

著しく人件費比率が低い保育所がある

1月28日から通常国会が始まり、保育についても国会では議論が続いている。

認可保育所に入る運営費は8割が人件費とされながら、それが他の目的にも流用されてしまう「委託費の弾力運用」についても、昨年の国会では複数の議員から問題視する声が上がった。

本来、保育所に支払われる運営費を指す「委託費」は、人件費が8割、事業費が1割、管理費が1割で見積もられている。

内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」(2017年度)でも、実績として私立の保育所の人件費比率(全体)は76.7%、事業費は12.0%、事務費(管理費)は7.9%、その他の費用が3.4%だった。

一方、東京都が公表している2015年度の都内全域の株式会社の全体人件費比率は49.3%と低い(社会福祉法人は同69.6%)。

 

筆者は約1年前、岩波書店の月刊『世界』(2018年2月号、3月号)で2回にわたり「委託費の弾力運用」の問題について調査報道を行った。

東京都から情報開示請求して得られる保育所の財務諸表には、「園長、事務長、事務員、用務員」を除く、いわば現場を支える保育士、保育補助、調理員など非常勤も含む「保育従事職員」(以下、保育者)についての人件費比率が記載されており、著しく低い保育所があることをレポート。続く4月発刊の『ルポ保育格差』(岩波新書)でも問題提起した。

同族経営の場合、家族・親類関係にある理事長や園長や事務員だけが高額な報酬を得ていながら保育士は月給が手取り15万円程度、というようなケースもある。

そうしたケースでは管理職側の高額報酬が全体の人件費比率を押し上げてしまうため、「全体人件費比率」だけでは見誤ってしまう。

しかし、都が集めている「保育者人件費比率」を調べることで、現場に本当に人件費が回っているか検証する有力な材料となる。

東京23区にある731ヵ所の認可保育所の2015年度の財務諸表について調べたところ、保育者の人件費比率の平均は社会福祉法人で55.4%、株式会社で42.4%と、やはり低いことが分かった。

注:2015年度は東京都が調査に乗り出した初年度のもので、数値に誤りがあっても受領している。また、都は事業活動収入に占める保育従事職員の「給与支出」の割合を求めていたのだが、都側が財務諸表の項目に「人件費比率」と記載したため、筆者の調べた資料には定福利費を含めた人件費を記載した保育所も混在していた。現在は「事業活動収入に占める保育従事職員給与支出」の割合と改訂されている。

株式会社の保育所で「保育者人件費比率」が低い10施設は17.3~25.5%で、社会福祉法人は同24.5~31.4%だった。保育者人件費比率が4割未満の施設は、社会福祉法人は39施設だったが、株式会社は107施設で全体の4割を占める結果となった。

厚生労働委員会の理事を務める大西健介・衆議院議員(国民民主党)も、「委託費の弾力運用」の問題について厳しい目を向け、国会でも取り上げている。

「人件費比率が低い状態にあることは大きな問題」と言う大西健介・衆議院議員

園長や理事長が多額の報酬を得る一方…

小林:2018年6月8日の厚生労働委員会で月刊『世界』を資料に質問をされていました。国は人件費が80%を占めると想定していますが、人件費の低い順から見ていくと、実際にはずいぶんと違います。この問題をどう見ますか。

大西:国としては、若い職員が多い場合や、開園して間もないと人件費比率が低くなるのではないかという答弁でしたが、そもそも保育士の賃金は、国家公務員給与で5~6年目で高止まりという計算になっています。

実際の職員の年齢がどうかという以前に、もともと若い年齢層での賃金水準でしかないという問題があります。

そして、仮に年齢構成などで人件費比率が低くなるとしても、80%かかるはずの人件費比率が50~60%というならまだしも、20~30%程度になるのは乖離が大きすぎて説明がつかないのではないでしょうか。

いくら個別の事情を加味したといっても、理論上の人件費比率と実際の数値が違いすぎます。

また、注目したいのは、社会福祉法人では全体人件費比率と保育者人件費比率の差が大きいことです。ここから、園長や理事長だけが多額の報酬を得て、現場の保育士の賃金が抑えられている可能性があることは否めません。

小林さんの記事によれば、株式会社の場合は、約4割の保育所で保育者人件費比率が4割未満となっていますね。総じて人件費比率が低い状態にあり、これは大きな問題だと見ています。