『噂の真相』岡留安則さんの訃報に思う、メディアが歩むべき一つの道

今も昔も変わらないものがあるはず

『噂の真相』がはたした役割

かつて、「噂真ジャーナリズム」が確立されていた。国民的雑誌『文藝春秋』に次ぐ公称20万部の発行部数を誇った『噂の真相』が放つ、反権力・反権威で右も左もぶった切るスキャンダルジャーナリズムのことである。1979年に、1口10万円の株主を募って、社長兼編集長の岡留安則氏が始めた雑誌だけに、「岡留ジャーナリズム」と言い換えても良かった。

その岡留氏が、1月31日、肺がんのため那覇市内の病院で亡くなった。71歳だった。
世に○○ジャーナリズムと呼ばれるものは数多い。朝日ジャーナリズム、文春ジャーナリズム、産経ジャーナリズム……。それぞれに社風と論調があり、書き手はそれぞれの文体と歴史観を持ちながら、作品(記事)には会社のカラーが反映された。

それがマスメディアの歴史であり、統一感と一定レベルの記事の質を保てるのは、人的資産とそれなりの資本を有する総合力の賜物だった。その世界に元全共闘の若者が単身乗り込み、04年の休刊までのわずか25年で噂真ジャーナリズムを確立、評価されたのは驚嘆に値する。

 

私が、最後に岡留氏と会ったのは、5年前の夏だった。休刊後、那覇市に居を構え、「沖縄の視線」で情報発信していた岡留氏は、夜はいつものように店主を務めるスナック「瓦屋別館」にいた。夜は酒場、というスタイルは新宿・ゴールデン街を夜な夜な徘徊する現役時代と変わらなかった。

既に活字ジャーナリズムの退潮は明らかだった。新聞は発行部数を減らし、週刊誌、月刊誌の廃刊が相次ぎ、「紙媒体の危機」が叫ばれていた。私は岡留氏に聞いた。

「ネット情報には信頼性が欠ける。取材を尽くして権力を撃つ『噂の真相』のような雑誌が、今こそ求められているんじゃないか」

岡留氏はすぐにこう切り返した。

「編集の手が入らず、情報が無責任に流される今だからこそ、『噂の真相』的な情報が求められていることはわかっている。ネット時代の今でも、採算に乗せる自信はある」

それから5年が経過し、紙媒体をめぐる状況はさらに厳しい。

最盛期、100万部を突破することもあった総合週刊誌は、日本ABC協会調べで、最も売れている『週刊文春』が36万部(17年下半期以下同)で、以下、『週刊現代』25万部、『週刊新潮』24万部、『週刊ポスト』22万部と続く。5年前の12年下期と比べると退潮は顕著で、軒並み3割から4割のダウンである。

新聞も同じで、日本ABC協会発表の総販売部数は、3495万部(18年11月調べ)で前年同月比167万部の減少。新聞社別では、『読売新聞』が835万部(4・7%減)、『朝日新聞』が570万部(6・0%減)、『毎日新聞』が257万部(11・2%減)で、毎日は三大紙から陥落寸前、朝日は500万部割れが目前だ。

こうした状況に漂うのは、紙媒体の「ネットにはしょせん勝てない」という厭戦論であり、「ネットにタダで記事を利用されている」という被害者意識であり、「優良なジャーナリズムは守るべき」という支援期待である。

しかし、雑誌社も新聞社も、ネットへの移行と競争原理のなか、読者の信頼と支持を得た媒体だけが勝ち残れることは承知している。ただ、その道が見いだせない。ネット広告モデルでは採算が取れず、かといって読者離れが心配で、課金導入をためらっている。