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もうハンコは必要なくなる? 霞が関「デジタル化改革」の現実味

さまざまな「しがらみ」を振り切れるか

ハンコ・印紙・添付書類をなくす?

経済産業省が昨年6月に新設した「デジタルトランスフォーメーション(DX)オフィス」については、以前「現代ビジネス」で報じ、大きな反響があった。DXオフィスが目指す目標――それは、最終的に「行政手続きから、ハンコ(押印)と印紙、公的な添付書類を省略すること」だ。

これら行政手続きを所管するのは内閣府か総務省。そこに経産省が手を出すのは、かつて例がない。

 

経産省が示している見通しは、概ね下記のようなものだ。

これから5G通信へ移行し、AIやビッグデータが普及すると、これまで個別に動いていたシステムが相互に連携するようになり、DX=デジタル改革が本格化する。民間企業には競争原理が働くので、放っておいてもそれなりにDX化は進むだろう。

ところが、行政手続きが旧来のままでは、民間企業の足を引っ張ることになってしまう。民間は秒単位のスピードで動いているのに、行政手続きに何日もかかっているようでは、国際競争で太刀打ちできなくなる……。

まずターゲットとなっているのは、いまでさえ不要論が高まっている「押印」についてだ。

いわゆる「認印」は、押印した者の意思を確認するためにあるとされるが、印影を登録した実印でないものなら、法的な有効性はほとんどない。要するに、気持ちの問題というレベルである。

手数料支払い済みであることを証明する印紙は、いまやSuicaなどの電子マネーやクレジットでも決済できる。役所の側も、公的手続きの書類をマイナンバーをキーにして役所間で確認できる。

現在はまだ、公的手続きで役所を訪れた申請者自身が、書類を持って各窓口をぐるぐると巡るのが一般的である。しかし、その気になれば戸籍謄・抄本だの住民票だの、納税証明書だの不動産登記簿だの、紙の書類をいちいち持ち出さなくとも確認ができる時代だ。住民が公的書類の運搬役をさせられる現状は、「住民本位の行政サービス」とは言いがたい。

DXオフィスに籍をおく経産官僚と話すと、彼らの構想が上記にとどまらないことがわかる。「車検証や車の保守データは、ICチップに記録して車両に組み込めばいいのではないか」、「そもそも、なぜ運転免許証を常に携行しなければならないのか(弁護士や医師は資格証を常時携行しているか?)」、「個人認証で、なぜいまだに20世紀型のプラスチックカードを使うのか」……。

ビジョンは膨らむが、とはいえ、住民・国民が行う行政手続きやサービスの現場は市区町村役場に集中していて、経産省の所管はほとんどない。霞が関の強固な縦割りの中では、さすがに他省庁の所管に手を突っ込むこともできない。

そこで、経産省から相談を受けた内閣官房がひねり出したのが、「新規の法人登記手続きのデジタル化」という変化球だった。申請から登記完了まで、現在の最短7日を24時間に短縮するのが目標だ。

これなら、DXオフィスがかねて進めている法人認証共通基盤プロジェクトともリンクできる。2019年度中に、経産省と中小企業庁の内部で実証的に運用し、2020年度に本番サービスに入る計画という。