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“過去の遺物”でビール革命!“伝説のホップ”仕込みのエールを飲む

醸造科学に新展開をもたらした謎の成分

ビールの原料は3つだけ

“伝説のホップ”──。

なんとも魅惑的な言葉ではないか。麦酒党の人ならずとも、一度はそのホップでつくられたビールを口にしてみたいと思うだろう。

その“伝説のホップ”は、日本で生まれながら一度は忘れ去られた存在だった。最近になって“再発見”され、逆輸入するかたちでふたたび表舞台に返り咲いたのだという。

いったいどんなホップなのか?

それを用いたビールづくりに邁進している人たちがいると聞きつけて、サッポロビールを訪ねた。ビールメーカーは数あれど、同社は日本において、明治初期から継続的にホップの育種を続けてきた唯一の会社だ。

多彩な味や香りで喉をうるおし、楽しませてくれるビールだが、じつはその原料は、原則として3つしかない。──麦芽とホップと水。

これは、いまを遡ることじつに500年前、1516年にビールの本場・ドイツで発布された「ビール純粋令」に基づいている。一部に、果実やスパイス系などの副原料を使用するものもあるが、ほとんどのビールは、こんなにシンプルな原料からつくられているのである。

【写真】麦芽とホップと水だけがビールの原料
  麦芽とホップと水──ほとんどのビールはこの3つの原料からつくられている

だが、実際にホンモノのホップを見たことがあるという人は少ないだろう。

「ホップの苦みが効いてるね」とか、「このホップの香りがいいね」とか言いつつ、グビグビ飲み干して終わりという人がほとんどではないか。そんなことでは、まだアルコールを口にすることもできない5歳児に叱られますよ。「ボーッと…!」

伝説のホップでつくられたビールをグビリ

思わず脱線してしまった。話をもとに戻そう。

果たしてホップは、ビールに何をもたらしているのか。
伝説のホップの「伝説」たるゆえんとは何か。

サッポロビールで“伝説のホップ”によるビールづくりに携わるクラフト事業部の新井健司さんと、ホップの基礎研究を行う蛸井潔さんのお二人に、話を聞いた。

新井さんは2018年秋、銀座ライオンビアホールで開かれたクラフトビールの試飲イベントで司会を担当。美味しいビールと料理で、人はこんなにも無邪気になれるのか、というほどの盛り上がりを演出していた。

そして、この日ふるまわれていたものこそ、「伝説のホップ」を使った生ビール。市場にはほとんど出回ったことのないビールだ。

その味は……というよりも、その香りはなんとも芳醇で、最初はビールとは思えないものだった。

まず、鼻で嗅いでみると、強いフルーティな香りがする。飲んだときに喉から鼻に抜けていくのは、ヒノキやレモングラスを思わせるようなウッディな香り。いわゆるベルギービールとも違う、もちろん一般的なラガービールとも異なる、独特な香りが楽しめる。

それが、伝説のホップの名を冠した「ソラチエースエール」というクラフトビールだった。喉ごしを楽しむというより、多彩な香りを楽しむビールといっていい。