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家賃を滞納する若者たち「3つの共通点」

2千件以上のトラブルから見えたこと

司法書士として約16年間、2200件もの家賃滞納トラブルに関わってきた太田垣章子さん。その経験を『家賃滞納という貧困』という一冊に上梓し、他人事とは言えない実例とその原因を多く伝えている。

家賃を滞納するのは、決して仕事に失敗した人や養育費を受け取れていない片親家庭だけに限らない。なかでも最近の特徴として見られるのが「若者層」による家賃滞納だ。その若者たちの中には「3つの共通点」があると太田垣さんは言う。

 

共通点①家賃保証会社を使う

私が家賃滞納のトラブルに関わり始めた当初、賃借人に督促をしても効果がない場合は、親や兄弟などの連帯保証人を巻き込むのが一般的でした。けれど最近では、連帯保証人の代わりを「家賃保証会社」が担うケースが増えています。

家賃保証会社とは、部屋を借りる際に必要な、連帯保証人の責務を代行してくれる会社のこと。審査に通り、家賃の1カ月分程度の保証料を支払えば保証人なしで部屋が借りられるとあって、多くの人が利用しています。

「家賃保証会社」には多くの利点があります。家族がいない人でも確実に部屋を借りることが可能になりますし、家族がいても遠距離であるなど、頼みにくい場合もあるでしょう。ですからその制度によって救われている人は少なくありません。

家賃保証会社は古い会社だと、創立から20年を超えるところもあります。ただ、実は法規制がないため、日本に何社あるのか正確な数がわかっていません。法規制がなく誰でも自由に会社を設立できてしまうだけに、実態を把握するのが難しいのです。

背景には家族関係の希薄さがある

家賃保証会社を利用する人が増えている背景には、いくつかの事情が存在します。1つは、身近に連帯保証人になってくれる人がいないということ。連帯保証人には経済的な基盤が必要ですが、そこで年金受給者はダメ、高齢者はダメ、現役で働いていてそれなりに収入がある人となると、頼める人が限られてしまうのです。

親がダメなら兄弟や親類にと思っても、連帯保証人になるには印鑑証明の提出、実印での書類捺印、所得を証明する書類の提出義務など、かなりの手間がかかります。頼む方にも頼まれる方にも、大きなストレスがかかってしまうのです。

もう1つは家族関係の希薄さです。「実家とは何年も音信不通」「うるさく言われるから連絡したくない」「親も経済的な余裕がないから頼めない」など、さまざまな理由で身内に頼れない若者が増えているのです。その点、家賃保証会社を利用すれば、肩身の狭い思いをせずに部屋が借りられるので、その方が楽でいいと考えるのでしょう。

特に私が若かった頃と今の若い人の「親の経済力」には、大きな差があります。私が学生の頃は日本の景気も良く、仮に子どもが下宿先の家賃を滞納しても、親が菓子折り持参で大家さんにお詫びに来るような精神的・経済的余裕がありましたが、今は親も自分の生活で手一杯。援助したくてもできないことが多いのです。

「いやもう無理っす~」滞納額は30万円

たとえば私が担当した人で、家賃85,000円のマンションに住んでいる、23歳のAさんというサラリーマンがいました。遊びにお金を使ってしまい、家賃を1か月滞納したのをきっかけに、あっという間に滞納額は30万円に膨れ上がりました。もちろん彼には払う余裕などありません。「どうするの?」という私の追及に対して、Aさんは一言「いやもう無理っす~」。

その後も説得を続けましたが「親には知られたくない」と言い張るため、実家に連絡を取ることもできません。最終的にAさんは、付き合っている女性の家に転がり込み、今後は彼女の管理のもと、滞納分を分割で支払っていくことで落ち着きました。

また、こんなケースもありました。家賃10万円の部屋に住んでいた20代のBさん。ある時、滞納が続いたため「今ここで、ご両親に電話しなさい」と実家に電話をかけさせました。

するとBさんが「あ、俺だけど」と言った瞬間、電話はブツッと切れて不通に。どうやら過去に何度も同じようなトラブルがあり、親から愛想を尽かされたようなのです。結局Bさんは、強制執行の直前に最低限の荷物だけ持って夜逃げしました。Bさんはその後どうしているのでしょうか。