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ヤクザを演じても男の哀しみが溢れてくる…大杉漣の魅力を語ろう

津田寛治×吉田多喜男×篠崎誠
大杉漣(おおすぎ・れん)
芸名はギター奏者・高田漣の名から借りたもの。無類のサッカー好きとして知られ、プライベートチームを作ってプレーしていた。座右の銘は「あるがままに」

稀有な役者だった。ただじっとたたずんでいるだけで、悲哀がにじみ出て、物語にぐっと奥行きが生まれた。いまだに、画面の中にあなたの姿を探してしまう。

「大杉! 何でなんだ」

篠崎 大杉漣さんがお亡くなりになってまもなく1年が経ちますが、いまだに実感がわきません。大杉さんが制作・主演した映画『教誨師』に私の立教大学での教え子たちがインターンとして関わっていました。

当時、完成したばかりの同作を見て、「『大杉さんに出てください』と言える自分の企画を早く考えなくては」と思っていた矢先に訃報に接して、思わず呆然としました。

吉田 亡くなった当日、病院にいた大杉さんのマネージャーから電話がかかってきたとき、思わず「冗談やめてくれよ」という言葉が口をついて出ました。

でも、「吉田さん、冗談じゃないんです。大杉が、亡くなりました……」と。事務所にいたのですが、「嘘だろ」と大きな声を出してしまい、みんなが一斉に振り向いた。

津田 僕は、京都で内藤剛志さん主演の刑事ドラマの撮影をしていました。合間に休憩をしていたら、内藤さんと石丸謙二郎さんが携帯の画面を見ながらヒソヒソ話をしている。

「どうしたんですか?」と聞くと、内藤さんが携帯の画面を見せてくれた。そこには、〈大杉漣さん 死去〉と速報が出ていた。目に入った瞬間、自分でもビックリするくらいの声で、「ちょっと!」と叫び、画面を手で遮っていました。

そのあとは、ちょっと普通に撮影できなくなってしまって……。内藤さん演じる刑事と犯人役の僕が激しく言いあう緊迫したシーンなのに、内藤さんの目から涙がボロボロとこぼれ落ちてくるんです。

どうにもならなくなり、内藤さんが「ごめん! 5分だけ時間ちょうだい」と言って、近くの竹林へ消えていった。そうしたら、しばらくして内藤さんの叫び声が響きました。「大杉ッ! 何で、何でなんだ」って。

 

篠崎 私は、他の方の現場でご一緒するばかりで、ついに監督と俳優としては大杉さんとご一緒することはありませんでした。

その私でさえ、いまだにショックから立ち直れていないのですから、何度も組まれたお二人にとっては特別な思いがおありでしょうね。

吉田 はい。なにしろ、大杉さんには'93年の『ソナチネ』から'17年の『アウトレイジ 最終章』まで、合計10本もの北野武監督作品に出演していただきました。北野映画には絶対に欠かせない存在だった。本当にお世話になりました。