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あるブレーキメーカーの経営危機が示す、日本の自動車産業の暗い未来

「巨大化」のリスクをどう考えるか

トヨタ自動車を筆頭株主とする自動車部品メーカー「曙ブレーキ工業」が、北米事業の不振から私的整理に追い込まれた。トヨタが支援を行うとの報道もあるが、トヨタはすでに多数の関連企業を抱えており、ダイハツやSUBARUなど多くの自動車メーカーも傘下に取り込んだ状態にある。

EVシフトを目前に控え、自動車産業は近い将来、大規模なスリム化が必至と言われているが、トヨタは日本の自動車産業を維持するため、巨大化せざるを得ない状況に陥っている。もしトヨタが曙ブレーキの支援に乗り出せば、その傾向にさらに拍車がかかるだろう。

絶好調が続いていたはずの北米市場の不振を原因とした曙ブレーキの経営危機は、日本の自動車産業の近未来を暗示しているように思えてならない。

 

資金繰りが厳しかった可能性が高い

曙ブレーキ工業は2019年1月30日、「事業再生ADR」という制度を活用し、経営再建を目指すと発表した。金融機関に返済猶予などを求め、経営破綻を回避したいとしている。

事業再生ADRとは、私的整理の一種で、会社更生法や民事再生法といった法的な手続きによらず、当事者間の交渉で問題を解決する制度である。対象になるのは金融機関が保有している債権なので、製品の納入がストップするといった実務面での影響はほとんどないと考えられる。

同社が経営危機に陥った最大の原因は意外にも北米市場の不振である。同社はトヨタ自動車を筆頭株主とする部品メーカーだが、独立色が強く、日産や米ゼネラル・モーターズ(GM)などとも取引がある。GMの新モデルの受注を逃したことで、米国事業は苦境に立たされていたが、少なくとも2019年3月期の中間決算(2018年4月~9月期)では黒字を維持しており、一見すると経営危機と呼べるほどの状況ではなかった。

直近の決算では赤字転落している可能性が高いかもしれないが、自動者産業にとってまさにドル箱ともいえる北米市場での不振による経営危機というのは、少々、解せないというのが正直なところである。

曙ブレーキのサイトより引用

だが、同社の財務体質を見ると、こうした状況もうなずける。同社は負債が過大であり、2018年3月期時点の自己資本比率は14%しかない。もともと高収益体質ではなく、2012年と2016年に営業赤字に転落しており、過去2年は数億円レベルの当期利益しか出していなかった。事業から得られるキャッシュフローでは設備投資を賄うことができない状態といってよいだろう。

負債が過大だと、常に金融機関への返済に追われることになる。このため、ちょっとした事業の変調でも、場合によっては支払いと受け取りをバッファする資金(つまり運転資金)が枯渇するという事態に陥る。

金融機関がつなぎの融資に応じてくれれば問題ないが、一部の金融機関が強く返済を迫ったとの報道もあり、これが引き金になった可能性は高い。

もし単なる資金繰りの問題であれば、増資などで自己資本を拡充し、金融機関への返済をリスケジュールすることで、再生はできるだろう。実際、筆頭株主であるトヨタに救済を打診したとの報道もあり、もしそれが事実なら、今後はトヨタ主導で再生が進む可能性が高い。