日本の「保育崩壊」は起こるべくして起きている…その問題点と解決策

阿部知子・衆議院議員インタビュー
小林 美希 プロフィール

小林:委託費の弾力運用については、自治体が独自にブレーキをかけるような施策も打ち出しています。東京都世田谷区では、全体の人件費比率が5割を下回った場合に、区独自の補助をしないという独自ルールを設けています。

阿部:そうした自治体の知恵も必要です。国が誤った政策をとったとき、自治体が子育て政策どう展開していくか重要です。気概ある自治体に頑張ってほしい。

人件費比率は、国が想定している通り本来は8割かけるべきではないでしょうか。そうでなかったとしても、弾力運用する際には、流用を避けるため人件費比率の最低基準を設けるべきです。

「保育が食い物にされてはいけません。この流れを、くい止めなければ」(阿部 議員)

保育士の母性保護が守られる必要性

小林:質の低下に歯止めをかけるべきなのに、2019年10月から行われる予定の幼児教育の無償化では、基準を満たさない認可外保育所も5年の猶予つきで対象になっていることが問題視されました。認可外のどこまでを対象とするのかは自治体が独自に条例で決めていくよう方向づけられました。

阿部:「悪貨は良貨を駆逐する」とはよくいったもので、良い保育を行ってもそうでなくても入るお金が同じとなれば、自ずと質が低下していくものです。せめて認可外指導監督基準を守っている施設でないといけないでしょう。

都道府県による監査は、1年に1回あればいいほうです。東京都の監査カバー率はわずか3%。全国平均は71%ですが、そのうち認可外指導監督基準に適合するのは55%しかありません。

認可外保育所が無償化の対象になることが保育の質を落としめる最後の一撃になることでしょう。恐ろしいことが起きようとしています。

待機児童対策と称してお金のばら撒きを行い、かつ、保育の基準を下げて危険の分配をしているのは、許しがたいことです。

国際条約である「子どもの権利条約」に基づいて、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「(自由に意見を表す等)参加する権利」の4つの子どもの権利を守って、子どもにとっての最善を第一に考えた政策でなければなりません。

 

小林:保育所には、子育てに困難さを感じる保護者をサポートする役割もありますね。

阿部:保育所とは、虐待に陥りかねない親子をサポートできる場でもあることを忘れてはいけません。

どんな親だって、労働環境が悪く、忙しい毎日を送り、子育て経験もなく周囲からのサポートもなければ、自分の言うことに従う子どもの育て方になってしまうことも起こり得ます。頑張っていながらも、虐待につながることもあります。

そこを保育園が受け止めて、子どもってこういうものだ、こんなときは、こう考えれば良いとアドバイスするうちに親が変わっていくこともあるのです。

保育園に安心して子どもを預けられ、そこで子どもが自由な表現ができるようになっていく。その子の姿を見て親も変わっていく。そういう場であるためにも、保育士の処遇改善が必要です。

小林:具体的には?

阿部:賃金だけでなく、保育士の母性保護が守られることが必要です。働く妊産婦は労働基準法と男女雇用機会均等法によって、業務の負担軽減がされる、産休を必ず取得できるなどの「母性保護」が規定されています。

しかし、人手不足の保育現場ではそれが守られずに「妊娠の順番制」などが噂され、マタニティハラスメントも起きてしまう。