日本の「保育崩壊」は起こるべくして起きている…その問題点と解決策

阿部知子・衆議院議員インタビュー
小林 美希 プロフィール

小林:一般財源化以降、自治体は保育の受け皿整備を民間に委ねる傾向が強くなっています。そして今、委託費の弾力運用によって、新しい保育所の設置費用に人件費が流用されるケースが多くなっています。8割かかるはずの人件費が抑え込まれて4~5割でも驚く数字でないのが現状です。

阿部:保育の質を落とすべくして落としたのが、2000年と2004年の施策、「委託費の弾力運用」と「公立保育所運営費の一般財源化」に他ならないのです。これらが起因して、まさに「保育崩壊」が起こっているのです。このことを、多くの人に気づいてほしいと思います。

そして、その一番の犠牲となるのが、子どもたちです。生後数ヵ月の乳児のお昼寝中の死亡事故は後を絶ちません。少ない人数で乳児の食事と就寝のケアをしようとすると、どうしても寝ている子のケアが盲点となってしまいます。

繰り返しますが、事故に及ばなくても、常に子どもが急がされ、自分の要求を出すことを抑え込まれ、ひたすら保育士の顔色を見て、それに沿わなければならない状況では、萎縮した子どもになっていく。

これは国会議員としての立場だけでなく、一小児科医という立場から見ても見過ごすわけにはいきません。ごく当たり前のように、普通に、保育の質が劣化し始めていることへの危機があり、止めなければならない。

ただ、そのような保育所でも、預けて働かなければいけない親もいます。非正規雇用で育児休業も取らせてはもらえず、とにかく働かなければ家計が成り立たない厳しい状況の保護者は決して少なくはない。

昔から保育は「子守の延長」と軽んじられ、今では資格がなくてもいいとさえいう。全体の質が低下していくと、良い保育をする保育者が煙たがられて排除されてしまう現象も起こりうるため、全体の底上げが必要です。

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質の低下は無視された?

小林:待機児童解消の目玉政策として、2016年度から事業主拠出金が運営費の原資となる「企業主導型保育」が始まりました。

保育士の配置基準のうち保育士比率が50%、75%でも良いとされる制度で、まさに100%「保育士」でなくても良いとされています。認可外の扱いですが、認可並の運営費が助成されるため、申請する事業者が殺到しました。

2018年11月に世田谷区では企業主導型保育所で保育士が一斉退職したことで急に休園しました。

企業主導型は事業主拠出金で運営され、市区長村などの自治体には設置の権限がないため、急な休園が起こってもどこにどれだけ市民が預けているか情報もなく、自治体が善後策を打ちたくても打てない問題が露呈しました。

 

阿部:「企業主導型保育」の出現で、質の低下は敢えて無視されたと言えます。この制度は、問題点が国会で審議されない状態でできてしまいました。早く待機児童を解消したいという安倍政権の人気取りのために作られたようなものです。

開設工事費補助が4分の3も入り、場合によっては1億円ほど得られます。そこを狙って、コンサルタント会社が入って保育が素人の事業者まで参入してしまった。

配置基準を満たす保育の有資格者が50%でも良いとなれば、質の高い保育を提供しようという事業者でなくても参入できる。現場では資格のある保育士に負担ばかりかかっていくという矛盾の象徴のような施策と言えます。

企業主導型保育は事業主拠出金が年金特別会計に入り、そこから運営費が助成される仕組みとなります。

これは、ややもすれば、年金を原資にした“ばら撒き”政策。雨後の筍のように出てきた、保育を商売にしようという事業者に年金特別会計からお金がばら撒かれ、事業者は無責任に撤退していく。

保育所が急に撤退すれば、子どもが露頭に迷う。質が低下すれば子どもにしわ寄せがくる。事業者への審査も監査も甘いのではないでしょうか。

民間に保育の参入を許して約19年。ついにここまで来た。来るところまで来た、と実感します。保育が食い物にされています。

弾力運用で保育所から介護へ資金を流用していくのも“ばら撒き”と同じです。介護は介護できちんと手当していくべきです。社会の大事な子どもが食い物にされていることに強い憤りを感じています。