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結局、「暗号通貨バブル」で儲かったのは誰なのか?

「億り人」は江戸時代より重税…

暗号通貨やブロックチェーンについて知ると、すさまじいスピードで世のなかが変わっている気がしてくる。しかし技術変化のスピードと社会変化のスピードは同じではない。社会はそんなに早くは変わらない。

そう指摘するのは経済学者の坂井豊貴氏。新刊『暗号通貨VS.国家』を上梓し、ビットコインの非国家的な思想と秀逸な制度設計に迫った。その中でも私たちが抱いている大きな「誤解」——日本のいくつかの社会(不)変化に目を向ける!

 

「億り人」は江戸時代より重税

2017年12月、いわゆる暗号通貨バブルが頂点を迎えた。

ビットコインは1BTC=240万円を超し、リップルは1XRP=400円に到達した。1億円の利益を得た人を指す「億り人」なる言葉が生まれた。

では「億り人」は実際どれほどいたのだろうか。そしてほんとうに儲かったのは誰なのか。

暗号通貨の売買による所得は、税務上「雑所得」として扱われる。国税庁の発表によると、2017年の確定申告で1億円以上の収入を申告した個人のうち「雑所得が暗号通貨の利益を含んでいた人」は331人だった(2018年5月26日、日本経済新聞)。

要するにこういうことだ。

雑所得の総額が1億円を超し、そのうち1円以上が暗号通貨による人が、331人いる。これ以上のことは分からない。「億り人」は最大でも331人、実際にはそれよりずっと少ないだろう(ただし税の軽い国外に逃れた人を除く)。

では少数の億り人たちは、どれほどのお金を手に残せたのだろう。注意すべきは税金だ。かりに1億円ちょうどを暗号通貨の取引で得たとして、その「手取り」はいくらになるだろう。

結論から言うと、日本の税制のもとでは半分も手元に残らない。

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株式や投資信託といった金融商品の取引で得た収入には、分離課税といって一律20%の比例税がかかる(現在、これに加えて復興特別所得税0.315%がかかる)。つまり1億円のうち2千万円が税金で、手元には8千万円が残る。まあ悪くない。

しかし暗号通貨は金融商品として認められておらず、雑所得という扱いになる。これには累進課税がかかる。

課税所得が上がれば上がるほど、税額だけでなく、税率まで跳ね上がる。4千万円以上の課税所得には、所得税45%と住民税10%の計55%がかかる(現在、これに加えて復興特別所得税として、所得税額に2.1%の加算がある)。

手元には半分も残らない。江戸幕府の「五公五民」より重税だ。

ハイリスクな投資に成功した個人から、政府はノーリスクで取り立てる。つくづく国家ほど強いものはない。

というわけでほんとうに儲かったのは国家だが、国家という人はいないので儲かったのは実は日本国民。みんなで投資家の方々に感謝である。