一流企業勤務でも…?他人事ではない「家賃滞納という貧困」の現実

自分に関係ないと言えますか?
太田垣 章子 プロフィール

支出で一番大きな割合を占める「家賃」

消費者金融でお金を借りる、自分の人生で大きな一歩を踏み出したことで、タブーに対するタガが外れました。自宅の家賃を滞納するようになったのです。支出の中でいちばん大きなウェートを占める家賃を払わなければ、金策はかなり楽になりました。家賃の滞納は、消費者金融ほど督促が厳しくありません。1回だけのつもりが、翌月以降も払えませんでした。
 
独立してガンガン稼ぐ。そう思っていたのに、やっていることは消費者金融から借りたお金の返済に走り回るだけ。借金を仕事で返済するのではなく、借金で借金を返すというまさに自転車操業でした。
 
理香さんには、正直に言えませんでした。
裁判所から届いた訴状は、幸運にも自宅で自分が受け取りました。送達場所を会社にしてくれるよう書面を出せば、それ以降の書類は会社に送られ、訴訟のことを妻に知られることはありません。一発大きな仕事が入れば、それですべてがクリアになる、そんな甘い思いで現実から目を背けていたのでしょう。

この夫婦を見て、誰が「家賃滞納」を想像されるでしょうか。

この後、この夫婦は離婚し、相馬さんは破産の手続きを取られました。
騙そうという気持ちはなく、大切な理香さんを心配させたくないという思いやりの気持ちだったのでしょうが、結果、夫婦を離婚に導いてしまいました。

 

貧しい親の子は貧しいまま なのか

一昔前に比べると、国立大学も私立大学も、授業料は大幅に値上がりしました。自分の力だけで進学することは、もはや不可能な額となっています。加えて親世代の所得も激減しています。なんの苦労もなく大学に通える学生はほんの一握りではないでしょうか。

20歳の池本翔馬さんは、ここ数カ月、家賃の支払いが滞りがちになりました。家賃は3万8000円。すでに 10万円ほどの滞納となっています。
 
東京の大学に通う翔馬さんは、東北出身。新聞配達の奨学金制度を利用していたため、上京した当初は寮生活を送っていたようですが、新聞配達の仕事を辞めてしまったので、この部屋に引越してきたのです。住み始めてから5カ月ほどです。寮を出たことで解放感に浸り、少し遊びすぎてしまったのかな、最初はそう思っていました。

何回か電話をしたり手紙を出したり。翔馬くんから、ようやく電話がかかってきました。

「すみません、俺どうなるのでしょうか」

家賃だけは滞納しないと心に決めていた

実は、翔馬くんは友人から借りたバイクで事故を起こしてしまい、家賃を払うはずのお金でバイクの修理代3万円を払ってしまったそうでした。

「すみません。家賃だけは絶対滞納しないって決めてたのに」

聞くと、実は翔馬さんが幼い頃、ご両親がよく家賃を滞納していたのだということでした。

「隣に住む大家さんのところに『今月の家賃をちょっと待って欲しい』とお願いしに行くときは、母は必ず僕を連れて行きました。そうすれば、家主さんが怒らないからって。子ども心に僕はそれがものすごく恥ずかしくて。だから、自分は滞納なんて絶対にするものかって思っていました。それなのに……すみません」

翔馬くんのご両親は中卒でした。学歴にコンプレックスがあり、どうしても大学に行くように勧めたと言います。試験に合格し、お金はないために新聞配達の奨学金を利用することにしました。それならば寮もあって、奨学金を返す必要もありません。

しかし、実際生活が始まってみるとそれはとても過酷なものでした。