受験の季節は東京に遠征して授業を行う京都医塾の志村好美理事長 撮影/花房麗子

絶対に医学部合格…!?医者が「できないわが子」を入れる壮絶予備校

いくらかかってもいいからお願いです

2018年の夏に発覚し、大きな社会問題となった東京医科大学の不正入試事件。文部科学省で私立大学の支援事業を採択する学術政策局長が、息子の入学と引き換えに同大学を支援事業対象校に指定していたのだ。

……やっぱり、医学部には裏口入学があったんだ。そう思った人も多いだろう。今の世の中で医者は「金持ちになれる将来安泰の職業」の代名詞のようになっている。我が子の人生を安泰にしてあげたい、なんとかして子供を医学部へ進ませたい。その思いが時に不正を生む。

実は、我が子を医者にしたい。お金ならいくらでもかかってもいい。そんな親が駆け込んでくる場所が京都にもある。だが、ここは裏口入学の斡旋所ではない。

 

中学・高校・大学の受験まっさかりの2月。いろんな受験生の想いが交錯していることだろう。東京医科大学の不正入試は医師という人の命を扱う人を育てる環境として甚だ信じられない事件だったが、京都で編集者が見たのは、それとは真逆の、「絶対に正面から医学部に受からせる塾」だった——。(文・写真/花房麗子)

ベストセラー『京都ぎらい』で「京都の中の京都」と書かれた室町通りにあるが、目立つ看板などはない

「どうにもならない子」も医学部に

「うちに来る子たちは、他の予備校を何軒も回ったり家庭教師についたりして、それでもどうにもならなかった、というケースが多い。今年入ってきた中には8浪め、という子もいます。こういう子たちを預かって医学部に入れるのが私たちの仕事です」

京都のど真ん中、室町通りにある『京都医塾』。同校の志村好美理事長はこう話す。

受け入れ生徒数は、年間最大65人。現在は平均して50人強だ。なぜそのように少ない人数なのかというと、生徒一人一人に個室ブースが与えられるからである。それも塾に来た時だけ一時的に占有するのではない。入塾したら、個室ブースは1年間その生徒のためだけに使われる。『京都医塾』のビルに設えられたブース数が65室なのである。この部屋で、生徒は講師と一対一の個別指導を受ける。

小学生レベルの子すらいる

生徒数が少ない理由は他にもある。生徒のカリキュラムが完全フルオーダーであることだ。清家二郎塾長が言う。

「親御さん同席の元に行われる入塾前のカウンセリングで、全科目の分析(アチーブメント)テストというのを行います。AからDまであって、D は『中学内容から問題がある』。はっきりいうと小学生レベルでしかないという場合です。うちに来る子でAが並んでいることはありえなくて、中学レベル、もっといえば小学生レベルから教え直す子もざらにいます

英語がだめなのか数学がだめなのか、そもそも日本語=国語がわかっていないのか、などを見つけて、どの先生がどんなレベルからどういう教え方で理解させていくかを決める。1日のカリキュラムは8枠、14時間。一人の生徒に対して講師は12人もしくは13人がかり。生徒の学力の向上具合に合わせて、年の途中でカリキュラムを組み直すこともザラです」

下の写真はある生徒の1週間の時間割。黄色部分は講師のつかない自習時間だが、ここで何をするかも15分刻みで細かく指示されている。

ぎっしり詰まったスケジュール。まさに朝から晩まで勉強漬けだが、次第に生徒たちは慣れてくるという

『京都医塾』の講師は約70人で、基本的に正社員だ。予備校業界では、講師は予備校とフリーランス契約を結び、授業時間外は校内にいないのが一般的。しかし、同校は講師が正社員のため、常に校内に在籍している。カリキュラムが途中で組み替えられるのも正社員であるからこそだ。

とはいえ、小学生や中学生レベルからやり直さなければならないような子がいきなり医学部に入れるわけはない。生徒によっては2年、3年がかりになることもしばしばだ。

「それでも成績が全然上がらない子なんて、いないんですよ。それはその子が理解できるように指導していないからです。たとえ何年もかかっても、学力は上がっていくんです」