「千葉小4女児死亡事件」で痛感…日本の児童虐待をめぐる厳しい現実

母親逮捕から見えてくること
井戸 まさえ プロフィール

「敵」である公的機関ができること

虐待家庭のほとんどは学校を含めた公的機関を「敵」だと思っているのだ。

役所が関わった瞬間に「引っ越す」という手段を取る。そして、引っ越し先で行政の手が及ぶとまた引っ越す。そのタイムラグ等の行政対応の死角で虐待は深刻化し、死に至る悲劇を生むのである。

一方でこうした親子を救うために、公的機関である「役所にしかできないこと」がある。

たとえば、共依存となったDV被害者の救出である。加害者から離すのは難しいが、精神科医やカウンセラー、また生活をともにする指導員等の専門家を増員することは可能だろう。

たとえば、共依存となったDV被害者の救出である。マインドコントロール下にある被害者を加害者から離すのは難しいが、精神科医やカウンセラー、また生活をともにする指導員等の専門家を増員することは可能だろう。

加害者である父親に対して抵抗できなかった母親ついては批判もある。しかし、これがDVなのだ。

「状況手に取るようにわかります。母親の立場として初期は止めるのを試みますが、恐怖と疲弊で諦めてしまうんです。周囲には理解してもらいづらい。悲劇です」

こうした声が筆者のもとにとどいている。まさに恐怖と疲弊。母親はひとりでは抜け出せない。専門性が必要となる部分だからこそ、行政の出番なのである。

加害者から一刻も早く離すには、まず住居が必要なのだ。小学生ともなれば学校の問題もあるが、被害者たちの望みを聞いて、生活を開始するためのサポート等はできるはずである。

〔PHOTO〕iStock

結局母親がDV夫から逃れられず、または「再婚」や「内縁」という形で新たなDV男に還流していくのは、「他に居場所がない」「そこしか頼れない」からである。

ただ、現状で言えば、役所にDVの相談で行っても、役所は「原則」と「例外」を持ち出し、「個別ケース」で対応はできないと言われることも多い。

しかし、実は「個別ケース」は問題の典型であり、それを解決できれば多くの人が救われることは多いのに、だ。

役所の人とは、どうしても上下の権力関係が出てしまう。当然、役所の人々はその意識はないが、時として相手を思っていたったことが説教や叱責と取られてしまうことがある。

被害者が勇気をふるって言った言葉を受けとめることできないというケースもある。役所と被害者とつなぐ役割を担う人材育成こそ急務であるとも思う。繰り返すが、だからこそ「母親支援」を特出しして対応すべきであると思うのだ。

 

この事件を受け、自民党の文部科学部会は、教育委員会の対応は不適切だとして、事実関係の確認を進めるとともに、教育委員会と警察や児童相談所との連携が十分だったかどうかなども検証するとしている。

部会長を務める赤池誠章参議院議員は、「アンケートを父親に渡したことが、事件の引き金になっていたとしたら、取り返しがつかないことだ。教育委員会と警察の連携などを中心に確認を進めていきたい」と述べた。

また、「いわゆる『モンペ』(モンスターペアレントの略、学校において理不尽な要求をする親)対策を国全体としても実施していかなくてはならなくなっているのではないかと思っています」としている。

学校に理不尽な要求をする親と虐待親の連関性はあるだろうが、モンスターペアレント対策をしたからといって、虐待問題は減らない。道徳性を強調した「親教育」と「親支援」も違う。

そこをはき違えると、被害は拡大する一方である。